2017/08/08

コロンビアとキューバ滞在

IAMCR(国際メディアコミュニケーション学会)でコロンビアのカルタヘナに行ってきました。写真が街の中心にあるカンファレンス・センターで、このあたり一帯が奴隷貿易の拠点となった場所で「(負の)世界文化遺産」に登録されています。ネガティブな歴史も含めて観光資源となっているのがカルタヘナの魅力だと実感しました。

私はガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』の雰囲気を味わいたかったので、やや治安の悪そうなエリアに泊まったのですが、下の写真のように平日の真夜中でも路上に若者たちが集い、音楽を大音量でかけて飲みながら歓談していました。特に観光地という場所でもない教会前の広場が深夜でこの賑わいです。『百年の孤独』の舞台らしい雑多で魅力的な街で、古い建物が補修されて使われ、街全体が世界文化遺産として登録されています。夕食はMedia Studiesを専門とする先生方とご一緒したのですが、シーフード料理が実に美味しく、滞在中は毎日食事の時間が楽しみでした。


郊外にある鳥園で観た珍しいトリのショーも、日本では見たことのない内容で、思いの他レベルが高く、下のような漫画で見たような嘴の大きな鳥が、人間の指示に従ってボールなどを健気に運んでくれます。ヒッチコックの「鳥」のように、恨みを買うと復讐されそうな知的レベルです。某大学の若手教員が、インコにひどく気に入られ、長時間インコを肩に載せて、耳を甘噛みされ続けていましたが、ビルマの竪琴の演出は正しかったのだと感心しました。


カンファレンスが終わった後は、一人キューバに立ち寄りました。「そうだ、キューバに行こう」と。キューバも旧市街全体が世界文化遺産で、街を歩くだけでスペイン統治時代に戻ったような趣があります。ただ空港で荷物が出てくるのに2時間かかりました。係の人がひどく怒られていましたが、一向に荷物が出て来ません。その後「あっちの方から荷物が出るらしいぞ」という不確かな情報が拡がると、人々が「あっちの方」に流れ出し、半信半疑でついて行くと、本当に「あっちの方」から荷物が出てきます。社会主義を実地で学んだ気がしました。
 それでも街行く人々は至って親切で、六本木でダンサーをやっていたという怪しげな親子連れが、通りすがりに懇切丁寧に旧市街を案内してくれたのですが、他の国のようにチップを要求されることがありません。「また来てね」と言って、さわやかな笑顔で別れていきます。道を歩いていても、親切に(聞いてもいない)裏キューバ情報を教えてくれるなど、普通の人々が資本主義に擦れていない感じは、本物でした。



旧市街全体が70年くらい時間が止まっています。例えばヘミングウェイの定宿、アンボス・ムンドスや彼が通ったバーが、往時と変わらない佇まいで残っています。有名な50年代のアメ車タクシーも味わい深いですが、料金が高いので、私はオート三輪のドライバーと交渉して、1/3ぐらいの値段で、ゲバラの家など町外れに足を運びました。キューバの生活空間をオート三輪で間近に見られて楽しかったです。博物館のキューバ革命に関する展示も、アメリカとの両義的な距離が感じられて面白く、国全体として見れば一人あたりの所得は低いとはいえ、一人一人と向き合うとフェアな感覚が行き届いている感じがして、魅力的で、懐の深い国だと実感しました。「そうだ、キューバに行こう」と、また気軽に立ち寄りたいものです。