2012/10/18

「新潮45」11月号 バーチャル空間で過熱する「反日感情」

「新潮45」11月号に、バーチャル空間で過熱する「反日感情」、という原稿を書きました。特集の欄に掲載されています。

http://www.shinchosha.co.jp/shincho45/backnumber/20121018/

共同通信によると、9月に中国各地で起きたデモは、125都市で100万人近くを集め、日本でも様々な分析がなされてきました。ただ中国固有のネット文化との関わりで、今回のデモを分析した記事は皆無に近かったと思います。この原稿は中国の検閲事情と、若い世代のネット文化、都市近郊の若者の生活事情などを踏まえた上で、先の反日デモについて分析した論考です。

すでに中国の現在のネット人口は、2012年6月の時点で、5億3760万人います。今年と同様に大規模な反日デモが起きた2005年から、7年間で5倍以上に増加し、増加分の大半は若い利用者です。そして今回の反日デモに参加した人々は、ネットの利用頻度の高い10代後半から30代で、2011年8月に起きたロンドン暴動と同様に、インスタント・メッセンジャー経由で集まった若者が、デモの拡大に大きな役割を果たしています。

ネットとインスタント・メッセンジャーの普及を抜きに、今回の「反日デモ」は語れないと思うのですが、いかがでしょうか。このあたりの詳細は本文で。


2012/09/18

「新潮45」10月号 フェイスブック原稿

本日発売の「新潮45」10月号に、個人情報泥棒「フェイスブック」に騙されるな、という原稿を書きました。特集「頭を冷やせ」の部分に掲載されています。

http://www.shinchosha.co.jp/shincho45/backnumber/20120918/


日本は個人情報保護に関して法整備の遅れた「後進国」であるためか、ヨーロッパやアメリカのように「フェイスブック離れ」が進行していません。むしろ利用者はうなぎ登りに増えています。この現状をどう考えるべきなのか。

すでにフェイスブックは、アメリカでは個人情報の取り扱い問題で、20年間、連邦取引委員会の監視下に置かれています。ドイツでは情報保護局にEU法の違反でアーカイブの破棄を求められています。
日本ではヨーロッパほど問題になっていませんが、フェイスブックはプロフィールや位置情報、クレジットカード番号だけではなく、ユーザーがアップロードした写真から「顔指紋」まで収集しはじめています。個別に許諾を取ることなく生態情報を利用するやり方は、明らかに「一線を越えた」もので、複数の国々で問題になっているのです。
どんなに利用者がプライバシー保持に気を付けていても、友達同士で写った写真に実名がタグ付けされると、「顔指紋」を特定されていく確率が高まっていきます。現状の技術でも、子供の写真から実名と紐付けた「顔指紋」を特定することは、高い確率で可能だと思います。もちろんそのデータが外部に流出して別の用途に使われなければいいのですが・・このあたりの詳細は本文で。

日本では憲法にプライバシー権が明記されていないため、個人情報の利用に関する議論の土壌が弱いのでしょうか。
国民総背番号制の議論にも繋がりますが、そもそも解析されていい個人情報と、解析されるべきではない個人情報の線引きは、一企業が自由に決めていいものではなく、国や地域の社会規範に従って法的に定められるべき性質のものだと思うのです。
プライバシーを保護と、データ解析の利用促進の両立は、規制の仕方の工夫で可能なはずで、日本の個人情報保護の現状は、国際的なトレンドから完全に取り残されている感じがします。


2012/07/23

新潮45「忍び寄るステマの恐怖」

新潮45の8月号に「忍び寄るステマの恐怖」という原稿を書きました。
ステルス・マーケティングについて、「サクラ」や「ヤラセ」についての日本の事例だけではなく、中国の5毛党の「政治ステマ」からFace BookやGoogle GLassの「個人情報の抜き方」まで、将来予測も含めて幅広く論じた内容です。
フロイトの言う「他人の欲望の模倣」によって築かれた現代社会とステルスマーケティングの関係について、コンパクトに理解できる論考と思います。ぜひご一読下さい。
無料のアプリケーションを利用しているうちに、いつの間にか個々人の性格や性的な趣向を判断され、家族構成、病歴から生理の周期まで個人情報を収集される――私たちはこのような時代に足を踏み入れているわけですが、このような時代の延長にある未来とは、果たしてそれほど希望が持てるものなのでしょうか?