吉田修一著『逃亡小説集』(角川文庫)に解説を寄稿しました。累計20万部超えの人気シリーズの第2作の待望の文庫化です。前作の映画版「楽園」でパンフレットに解説を寄稿しましたので、このシリーズにご縁があります。帯に名前を出して頂き、光栄です。
下のカドブン(KADOKAWA文芸WEBマガジン)で私の解説を読むことができます。
https://kadobun.jp/reviews/bunko/entry-46808.html
吉田さんのご実家の酒屋の前を通って長崎南高校に通っていましたので(特に帰り道)、こういう形でご一緒でき、心より感謝申し上げます。吉田酒店の裏手の階段道から見える長崎の市街地・港・稲佐山の風景は、長崎で最も好きな風景の一つです。『現代文学風土記』収録の西日本新聞の連載(2018年の第3回『最後の息子』)で、担当デスクと一緒に山の斜面を上がり、写真を撮り、掲載しました。
「逃げろミスター・ポストマン」の解説で言及しましたが、ビートルズ版で有名なPlease Mr. Postmanの雰囲気を、マーヴェレッツ版の原曲の艶っぽさで表現しているのが、『逃亡小説集』全体の良さだと思っています。収録された4作品の中でも「逃げろお嬢さん」(酒井法子の逃亡事件をモデル)が特に素晴らしく、前作『犯罪小説集』の「百家楽餓鬼(ばからがき)』(大王製紙事件をモデル)と合わせて、男女の「悪漢小説」として映画化を期待してしまいます。
一般論として「逃亡」をポジティブに解釈すると、閉鎖的な場や陰湿な人間関係に悩まされている人たちは、その場や人間関係を変えようとするよりも、そこから「逃亡」する方が、心身面でのストレスが少なく、いい人生を歩むことが出来るように思います。