近年の作品では今村夏子の『星の子』、角田光代の『八月の蟬』、青来有一の『聖水』の3作品を注目作として挙げました。信仰と信迎の問題は、世俗的な問題≒文学的な問題として奥が深いテーマだと思います。
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現代文学が描く新興宗教
新興宗教を描いた日本文学史上の名作として、真っ先に高橋和巳の「邪宗門」が思い浮かぶ。大本教を連想させる神道系の新興宗教団体「ひのもと救霊会」が、昭和初期に弾圧され、神殿をダイナマイトで爆破され、戦後には進駐軍と対立し、武装蜂起に至るプロセスを描いた壮大な偽史小説である。松本清張の絶筆「神々の乱心」も、昭和維新の時代を背景とした作品で、未完ながらシャーマニズムと宮中祭祀のルーツに迫る高いテーマ性を有している。この小説は大陸の阿片売買で蓄積した資金を元手に、満州で盗掘された「神器」を使った礼拝で勢力を拡大した新興宗教団体「月辰会研究所」が、戦前の宮中に接近していく内容で、松本清張の絶筆に相応しく「禍々しい作品」である。劉慈欣の「三体」も、中国の共産主義と科学崇拝を「新興宗教」に見立てた作品として高く評価できる。
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