2022/08/08

「文學界」(2022年9月号)

 文藝春秋の文芸誌「文學界」(2022年9月号)、に吉村萬壱『CF』の書評を寄稿しました。表題は「「ポスト真実」の時代の「悲しみ」」です。この作品は、終盤に作品の認識を反転させる仕掛けがありますので、あらすじ等で紹介されている内容とは異なる読後感が得られます。冒頭からきな臭い空気が流れる吉村萬壱らしい作品です。

 前号の「文學界」の特集「入門書の愉しみ」に寄稿したハンナ・アーレントの原稿も好評でした。ご関心を頂いた方々に感謝申し上げます。個人的には、社会や人間について何か述べる時に、存在論的(超越論的)な思考の素養はとても重要だと考えています。オンラインで世論が形成される時代、「世界内存在」の諸条件を問う20世紀の哲学書を読み返すことは、社会や人間の無意識と向き合う上でも大事だと思っています。

「文學界」(2022年9月号)目次

*******
 学期末のレポートのやり取りで、メンタル面の不調について記していた学生が増えていたのがやや気がかりでした。前に下の毎日新聞の取材記事で記した通り、メンタル・ヘルスの問題は先入観や外見で「大丈夫」と判断されて、なかなか他人に理解されにくい問題だと思います。
(学生に踏み込んだ助言はできませんが)臨床心理士でも判断や対応が難しい症状もありますので、心療内科を受診して症状に合った薬を服用したり、(東畑開人さんの本を読むと)作業療法・デイケアも大事だと思います。新型コロナ禍が続き、無意識レベルで様々なストレスが蓄積していると思いますので、無理のないペースで頑張りましょう。

「コロナ感染巡る報道」毎日新聞(22年1月24日朝刊)