2017/03/06

文學界に「吉田修一論 現代文学の風土」(前編)を寄稿しました

文藝春秋の「文學界」2017年4月号に、「吉田修一論 現代文学の風土」(前編)を寄稿しました。吉田修一の作品について、他の文学作品と比較しながら、その「風土」に着目して論じています。

吉田修一さんは長崎南高校の先輩にあたる人で、生まれ育った場所がほぼ同じということもあり、「ネイティブ」らしい視点から論を展開しています。以前にも「10年代の入り口で 文學界2010」という特集で長めの批評文を書きましたが、今回は更に長く、前編・後編の合計で約420枚の分量があります。

文學界 最新号目次  *冒頭部分のみ立ち読みもできます。

前編で吉田作品と比較するのは、江藤淳・開高健・川端康成・丸山明宏(美輪明宏)・シーボルト・夏目漱石などで、朝日新聞で連載中の「国宝」にも少し触れています。「国宝」は1960年代を生きる人物とその風景の描写が生き生きとしていて、読み応えがあり、映画版の期待も高そうです。束芋のイラストも『悪人』と同様に素晴らしいですね。

吉田作品に馴染みがなくとも、作品から独立した作品として読めますので、ぜひ手にとってみてください。
「文學界」は日本を代表する文芸誌で、様々な書き手の文章が掲載されていますので、他の小説や評論と合わせてご一読頂ければ幸いです。


2017/02/13

日米首脳会談に関するインタビュー記事が毎日新聞夕刊に掲載されました

日米首脳会談に関するインタビュー記事が毎日新聞夕刊に掲載されました。「日米首脳会談 蜜月どう見る? 非常識な厚遇/ビジネスのよう/親密さ歓迎」という記事で、コメディアンのパックンことパトリック・ハーランさんの後で、今回の会談を「日本人向けフロリダ観光PR会談」であったと分析しています。
パックンって米政府寄りの人かとぼんやりと思っていたけど、こういう時に、毎日新聞でリベラルで的確なコメントをするあたり、ハーバードの卒業生という感じですね。
毎日新聞のオンライン版でも記事を読むことができますので、他の記事と合わせてご一読下さい。
写真が飲んだ後みたいな赤ら顔になってますが、この時は飲んでないですね。

掲載記事
http://mainichi.jp/articles/20170213/dde/041/010/054000c

毎日新聞・今日の一面
http://mainichi.jp/今日の1面/


2017/01/31

米大統領選挙に関する取材記事が毎日新聞夕刊の「特集ワイド」欄に掲載されました

以前に新潮45に寄稿した「米大統領選挙 ツイッター上の「人格非難」合戦」についての取材記事が毎日新聞の夕刊に掲載されました。
米国大統領選挙を題材とした「政治的ツールとしてのツイッターの威力」に関する内容で、毎日新聞夕刊・編集委員でノンフィクション作家の藤原章生氏が記事を作成しています。
毎日新聞の特集ワイド欄は、2016年度の平和・協同ジャーナリスト基金賞の受賞など、ジャーナリズムの世界でも注目を集めるコラムですので、他の記事も合わせてご一読下さい。
それと今年は3月と4月に発売の文芸誌に、計360枚ほどの批評文を入稿しています。こちらの内容について、また後日。
現在はその先の仕事に取り組んでいるところです。

特集ワイド 「民衆の武器」か「為政者(トランプ)の大砲」か
http://mainichi.jp/articles/20170131/dde/012/030/002000c

■毎日新聞・特集ワイド
http://mainichi.jp/wide/


2016/11/19

ゼミ学生の「湘南モノレールの活性化」に関するインターン活動が、東洋経済ONLINEで紹介されました

文教大学情報学部メディア表現学科、酒井信ゼミ3年の佐藤遥さんと荻原豪さんの「湘南モノレール地域アンバサダー」としての活動が、東洋経済ONLINEで紹介されました。記事のタイトルは「元商社マンが挑む「湘南モノレール」活性化」で、湘北短期大学准教授の大塚良治先生が執筆されています。学生2名はデジタルサイネージ会社「インセクト・マイクロエージェンシー(代表取締役・川村行治)でインターンを実施し、その活動の一環として、広告代理店の仲介による「湘南モノレールの活性化」に関するプロジェクトに参加しました。特に今年7月から9月までの期間でWeb上の広報活動に従事し、2人がWeb上で行った広報活動は、既に湘南モノレール社員へ引き継がれています。
 文教大学情報学部メディア表現学科では、「メディアの現場」と関わることのできる課外活動を推進しています。

東洋経済ONLINE
http://toyokeizai.net/articles/-/145321?page=3


2016/11/09

トランプ大統領の存在条件

本日、ドナルド・トランプの第45代米国大統領への就任が決まりました。現在、店頭に並んでいる月刊誌で、トランプ人気とヒラリー不人気の要因について、マス・メディアと異なったWebメディアの世論形成のプロセスを踏まえて分析した記事は、今のところ私の原稿(「新潮45」に掲載)しかないように思います。
米国のSwing Statesでの現地取材をもとに、どういうプロセスでトランプが大統領の座を勝ち得るほど人気を博してきたのか、Web上で展開された「プロレス式」の熾烈なネガティブキャンペーンの分析に重点を置きながら、9ページの分量で論じています。将来の日本の政治的問題を考える上でもヒントにもなるかと思いますので、ぜひご一読下さい。

Web版の目次へのリンク
http://www.shinchosha.co.jp/shincho45/backnumber/20161018/


2016/10/18

新潮45に「ヒラリーVSトランプ ツイッター上の『人格非難』合戦」を寄稿しました

新潮社が発行する月刊ジャーナリズム誌「新潮45」の11月号(10月18日発売)に、「ヒラリーVSトランプ ツイッター上の『人格非難』合戦」という論考を寄稿しました。
政治マーケティングに巨額の資金が投じられ、Web上のメディアを駆使してネガティブ・キャンペーンを繰り広げられる米大統領選について、現地取材を基にして分析した内容です。

なぜ泡沫候補だったドナルド・トランプが、選挙人の獲得数で民主党に圧倒的に有利な選挙戦で、終盤までヒラリー・クリントンと競っているのか。
NHKのように、CNNやNYTimesなど民主党に偏ったメディアを参照しているだけでは、実態を伝えることができないと思います。FOX Newsや米国のエンターテイメント番組やWWEのプロレスで、トランプがどのような評価を受けてきたのか。私の原稿ではエンターテナーとしてのトランプに光を当てて「トランプ現象」を分析しています。

また日本では安倍首相がヒラリーと会談するなど、ヒラリーが賞賛されることが多いですが、「なぜヒラリーがアメリカで嫌われているのか?」を上手く説明できていないと思います。
なぜアメリカ人は「ヒラリーと一緒にビールを飲みたくない」のか。2012年末にもヒラリーは脱水症状を起こして倒れていますが、この時患った脳血栓は治っているのか。
他にも、クリントン財団の利益誘導疑惑や、3万3千通のメール消去問題、ヒラリーの巨費を投じたネガティブ・キャンペーンの副作用などなど。
9月に2週間ほどアメリカの中西部を取材した内容を基に、「ヒラリーの不人気現象」について、様々な角度から分析しています。
2012年にニューヨークを訪れた時、私は5メートルぐらいの距離からオバマが話してるのを見たことがあるのですが、生で見た「話が上手くて華のあるオバマ」とヒラリーの違いも、今回の選挙戦を考える上で重要だと考えています。

アメリカ合衆国の大統領選挙については、論壇誌、ジャーナリズム誌で様々な特集が組まれていますが、「新潮45」も誌面に力を入れていますので、他の記事と合わせまして、お時間のある折にでも、ぜひご一読下さい。(下の写真は目次とシカゴのトランプタワー)

Web版の目次へのリンク
http://www.shinchosha.co.jp/shincho45/backnumber/20161018/




2016/05/23

ニュー・ラナークとロバート・オウエン

春学期がはじまる前の話ですが、スコットランドのニュー・ラナークに行ってきました。グラスゴーから電車で一時間ぐらいのラナークから、歩いて15分ぐらいのところにあります。前々から行きたかった場所で、書籍で読んでいた印象よりも、自然に囲まれた風光明媚な場所でした。

ロバート・オウエンがデヴィッド・デイルから引き継いだ紡績工場が、労働環境・教育・協同組合などの仕組みで注目されたのが19世紀前半。当時から労働者の自治が行き届いたモデル町として、世界中から訪問客が訪れていました。その後、1968年まで工場は稼働しています。

日本だと「新しき村」のように、農業や養鶏を基礎とした共有財産のコミューンは存在しますが(外部にも開放していて、美味しい農産物が買えますが)、工業に根ざした共有財産のコミューンは存在しないと思います。

ニュー・ラナークは現在も200名ほどの住人の手で、建物がホテルや展示施設に改装されて、往時の雰囲気を保全しています。
エンゲルスに空想的社会主義と批判されたロバート・オウエンですが、展示内容に目を通すと、英国では社会主義者としてよりも、共同体主義者(コミュニタリアン)として、再評価されているのが分かります。

オウエンは晩年、アメリカ・インディアナ州のニューハーモニー村で失敗しましたが、ニュー・ラナークは「成功」と言えるものでした。
エドマンド・ウィルソンが『フィンランド駅へ』で書いていましたが、アメリカの理想主義的なコミューンは宗教なしでは長続きしなかったわけで、オウエンをインディアナでの失敗で「空想的」と切り捨てるのは気の毒な気がします。

ニュー・ラナーク同様の理想主義的なコミュニティでは、ソルテアも世界文化遺産に登録されています。ソルテアにも足を運びましたが、こちらの建物も、本屋やレストランに改装されて現在も生きた町の施設として、住民に利用されています。

スコットランドを含む英国には、産業革命のごく初期の産業遺産が点在していて、今書いている原稿の関係で順番に取材しているのですが、古くても保全状態がいい産業遺産が多いのが印象的です。
戦禍が少なく、ヴィクトリア期の頃から産業革命期の遺産を懐古趣味的に大事にしてきたという事情もあるのでしょう。
車でアクセスするより他ない「とんでもない」田舎町に、3世紀以上も前の施設が綺麗に残っていたりします。

オウエンの死後、1世紀も生産を継続し、教育や自治の機能を育んできた建物が、住民に手入れされた状態で保全され、展示施設として利用されているのは、素晴らしいことだと思うのです。




2016/04/10

平成27年度「未来茅ヶ崎市」政策コンテストでゼミの学生が市長賞と企画部長賞を受賞しました

平成27年度「未来茅ヶ崎市」政策コンテストが茅ヶ崎市役所本庁舎開催され、情報学部メディア表現学科酒井信ゼミの学生グループが、市長賞と企画部長賞を獲得しました。
市長賞を獲得したのは酒井ゼミ3年生のグループ「チームパンよりご飯」で、決勝では「茅ヶ民ハッピープロジェクト~楽しいが生まれる町~」という発表を行い。以下の重点政策について発表しました。
重点政策1:外国人人口率5%を目指す!海の近くに住みたい人やベトナム人がターゲット。
重点政策2:海をすべて満喫することができる、日本唯一の場所。マリンスポーツ、BBQ、ビールの街としてブランド化。
重点政策3:茅ヶ崎市民の心と身体の健康を保つ。

企画部長賞を獲得したのは、酒井ゼミ3年生のグループ「酒井ゼミ ましゅまろチーム」で、決勝では「アロハで笑顔!人の集まる国際都市Chigasaki」という発表を行い。以下の重点政策について発表しました。
重点政策1:アロハで楽しい!ホノルルと姉妹都市だということを活かし、観光産業 を発展させる。
重点政策2:アロハで健康!茅ヶ崎の気候と土地を活かした健康的な都市を目指す。
重点政策3:アロハで結婚!質の高い教育と充実した雇用で暮らしたい街No.1。

就活前によい経験になったのではと思います。




2015/12/02

ゼミの学生が制作をお手伝いした教育番組が放送されました

情報学部メディア表現学科の酒井信ゼミの学生が、制作に参加したテレビせとうち制作の番組「しまじろうのわお!」のうたのコーナー、「じかんのうた」が放送されました。
11月28日(土)8:30〜 テレビ東京系で放送
「しまじろうのわお!」(ベネッセ提供)*「じかんのうた」は再放送もあり

番組公式HP
http://kodomo.benesse.ne.jp/open/tv/

番組の制作を指揮したのは、映像ディレクターで情報学部で非常勤講師を務めている江里口徹平先生で、2トントラックを含む車両4台を使用し、湘南キャンパス・スタジオに本格的なセットを搬入・設置した上で撮影が行われました。学生たちは撮影の現場で、撮影・照明・セットの運用などについて実践的なレクチャーを受けながら、小道具を操作するなどの制作をお手伝いしました。



「しまじろうのわお!」は、米国テレビ芸術科学アカデミーが主催する「国際エミー賞 2015」の子供向け番組の部門(International Emmy Kids Awards: Kids: Preschool)にもノミネートされています。

2015年国際エミー賞ノミネート作品の一覧

http://www.iemmys.tv/news_item.aspx?id=202

教育用の映像コンテンツの制作は、教員養成に重きを置く文教大学にとって将来性のある重要な分野です。情報学部メディア表現学科では、実際に地上波で放送される番組の制作実習を通して、「新しいメディアを用いた教育のあり方」について学生と共に研究しています。



チェルノブイリ原子力発電所 Unit 4に行ってきました

2015年にノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシエービッチの『チェルノブイリの祈り』と、前に株式会社ゲンロンから送ってもらった『福島第一原発観光地化計画』に触発されて、チェルノブイリ原子力発電所 Unit 4に行ってきました。
ロンドン大学での学会発表で空き日ができたので、ふらっとKievに立ち寄って、コツコツ書いているヨーロッパの産業遺産についての原稿の取材を兼ねて参加した感じです。
色々と考えることが多かったので、行って損はなかったと思います。
1986年4月26日に事故を起こしたUnit 4の目の前までツアーバスは乗り入れます。周辺の見学だけかと思ったら、ミニバンはどんどんUnit 4に近付いて、石棺の上にシェルターを構築する作業をしているど真ん前で停車するので、びっくりしました。Unit1〜3も車窓から見れます。

この日のツアーの最初の予約者だったこともあり、割引価格でランチ込みで100ドルぐらい。東欧の現地ツアーにしては高いなあ、と思いつつも、普通は140〜150ドルぐらいとられるらしく、ミニバンでチェルノブイリ村やソ連時代の通信施設なども見学できて、全体に充実した内容でした。
キエフの街中も期待していた以上に面白く、概して信心深いいい人が多かったです。3年ほど前に滞在したモスクワ大学の近隣の風景を思い出しました(ソ連から離脱したとはいえ、この国はロシアと似てますね)。ウクライナ問題の影響から、観光客も少ないので、屋台でコーヒーを飲んだりする時に出会う街中の人たちもフレンドリーでした。
ツアーの参加人数も少なかったので、ガイドの女の子からガイガーカウンターを小まめに見せてもらうことができました。
Unit 4の前で、3.2マイクロシーベルト/時が最大で、意外と数値は高くないんだなあ、と思いました。写真の奥にいるウクライナの作業員は、コーヒー(顔が赤かったのでウォッカ入り?)を飲みながら平然と屋外で談笑しています。
確認できた放射線量の最大値はUnit4の反対側の野外で、13マイクロシーベルト/時。働いている人たちは放射線量が高い場所を熟知しているのかも知れません。
Unit 4から離れた廃墟になった幼稚園の近くの土の上が、意外にも10マイクロシーベルト/時を少し超える放射線量だったので、周囲も除染が十分行われてきたとはいえないようです。
アメリカから来た若いカップルが、Unit 4の近くでは車を降りなかったのが印象的でした。ただUnit 4から遠いところにも放射線量が高い場所が点在していて、10マイクロシーベルト/時を超える場所が複数あったので、Unit 4から遠いから安全というわけではなさそうです。
原発のすぐ近くの消防署には、『チェルノブイリの祈り』で描かれていた通常装備で被爆した消防士たちの石像も立っています。
原発から直ぐ近くに街があり、旧ソ連時代は理想的な労働環境の街として宣伝されていたようです。旧ソ連時代の雰囲気が廃墟としてそのまま残されています。
下の写真は廃校になった小学校に置かれた、ガスマスクの山です。ガスマスクの素材の薄さが、当時のソ連の経済状況を実感させます。

キエフに戻って詳しく話を聞いたところ、キエフ市内ではチェルノブイリ原発事故の話題は、未だに「センシティブ」な内容なのだとか。
事故当日にどこで何をしていたか、身内で亡くなったり、病気になった人はいるのか、食べ物や生活用水がどれくらい汚染されていたのか、政府が事故の影響をどれくらい隠していたのか、現実に除染がどれくらい進んでいるのか、といった話は、『チェルノブイリの祈り』と同様にリアリティがあって、身に詰まされる内容でした。