2017/06/20

柏崎刈羽原発に行ってきました

新潟大学での学会の帰りに、柏崎刈羽原発に行ってきました。日本の原子力発電所の近くには、原発の広報と情報公開を目的とした施設が建っていることが多いのですが、柏崎刈羽原発にも「サービスホール」という名称の施設がありました。

敦賀原発の「あっとほうむ」に行ったときも思いましたが、施設の名称が福島原発事故以後の時代に適していないように感じます。「サービスホール」という名称には「(本当は公開したくないけど)サービスで情報公開を行っています」という高圧的なニュアンスが感じられますし、「あっとほうむ」という名称には、原発の存在を快く思っていない人々を小馬鹿にするようなニュアンスが感じられます。



ただ「サービスホール」の展示そのものは分かりやすく、1/5の原子炉模型があったり、原子力発電の基本的な仕組みについて説明していたり、世界の原子力発電についても、詳しいデータが表示されるタッチパネル式の良い展示がありました。福島第一原発の「廃炉に向けた取り組み」についても、目立つ場所に展示されていて良いと思いました。

ただ疑問に感じたのは原子力発電のコストに関する展示で、特に「原子力発電コスト 10.1円~/kWh」という説明です。



元データは経済産業省・資源エネルギー庁が出した2015年の下の報告書だと思いますが、
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/006/pdf/006_05.pdf
このデータの「社会的費用」のコスト算出が不適切であることは、その後の賠償・除染・廃炉等の費用の増大を考えれば明らかと思います。

例えば毎日新聞は2016年末、廃炉・除染等の費用が従来の想定の2倍に増えると報道しています。
経産省発表で2倍ですので、先々もっと増えるのでは、と思います。
https://mainichi.jp/articles/20161128/k00/00m/040/085000c

原子力発電が石炭やLNGの火力発電などよりも「コストが安く」「エコ」だと謳いたいのだと思いますが、このような神話が崩壊していることは、誰の目にも明らかと思います。しかも増えたコストは電気代で補填されていく計画だから、「原発のコストが安い」という展示は、市民感情を逆なでするものだとも思います。

原発に関して情報公開が促進され、観光や学校行事で人々が訪れる施設があること自体はいいことだと思います。ただ原発の存在を「コスト面」や「エコ」で正当化する展示は、3・11以後の日本では、明らかに説得力を欠いています。

エネルギーに関する展示施設に人々が求めているのは、長期的な視野の下で練られた「脱原発に向けたシュミレーション」や、「エネルギーの自治」を促進するような新しい技術や国内外の取り組みについての展示だと思うのです。