2024/10/05

松本清張記念館・館報と週刊読書人への寄稿

 松本清張記念館・館報(2024.8 第74号)に松本清張研究会の講演録(@東京学芸大学)が掲載されました。演題は「清張作品の「謎」と「秘密」に迫る ―『松本清張はよみがえる』を手引きに」です。4ページにわたり掲載されており、ゲラの手直しが大変でしたが、読みやすい内容になっています。次の「松本清張研究 第25号」(2025年3月)にも寄稿しています。



「週刊読書人」(2024年10月4日)に七尾和晃著『語られざる昭和史 無名の人々の声を紡ぐ』(平凡社)の書評を寄稿しました。表題は「昭和100年の年を前に 「集合的記憶」を「現実感」と共に継承する」です。隣が山本貴光さんの『スクウェア・エニックスのAI』の書評で、あまりのジャンルの違いに、笑ってしまいました。下に書評の書き出しのみ記載します。

 来月は久しぶりに論壇誌へ寄稿しています。他の原稿にも取り組んでいます。

昭和100年の年を前に 「集合的記憶」を「現実感」と共に継承する

『語られざる昭和史 無名の人々の声を紡ぐ』は市井の人々の戦前・戦後の体験を記録したノンフィクションである。学術的な区分では、歴史学的なオーラル・ヒストリー(口述歴史)と言うよりも、都市社会学的なライフ・ヒストリー(生活史)に近い著作である。語り手の人生を伝える簡潔な筆致に、著者のルポルタージュの執筆経験の豊かさが感じられる。

 マイケル・サンデルに代表される現代的なコミュニタリアニズム(共同体主義)は、同じコミュニティのメンバーと協業し、熟議を重ね、先入観に基づく判断を修正しながら、「共通善(アリストテレス)」を模索する点に特徴がある。社会秩序のあり方や人間の能力は、「偶然」に左右される度合いが高く、社会や人間の多様性と可変性を、新しい事例に即し、地に足の付いたコミュニケーションを通して学ぶ必要があるのだ、と。このようなコミュニタリアニズムの考え方を踏まえれば、コミュニティの成員が「偶然」と折り合いをつけながら生存してきた履歴と言える「ライフ・ヒストリー」を「集合的記憶」として次世代に継承することは、重要な意味を持つ。

<以下、つづく>