2018/02/12

文教大学酒井信ゼミ 卒業研究一覧

2010年に着任して2017年までの文教大学酒井信ゼミの卒論の一覧を作成しました。
ゼミの卒論については、仮説を立てて、それを立証する形式を採り、新聞・雑誌・書籍を通して社会秩序や価値観の変化について分析する「メディア研究」であれば、テーマ設定は基本的に自由としています。一覧を作ってみると、学際的で、多様なテーマが並んでいて面白かったです。

卒論は、選択科目だった時期が長く、必修科目の時期とは、提出された論文の数(と教員の仕事量)が異なりますが、ほとんどの論文がA4で30ページを超える分量の内容で、50ページ以上の論文も多くあります。多くの学生(と教員)が時間をかけ、多くの良い論文が仕上がったことを嬉しく思います。

文教大学酒井信ゼミナール 卒業研究一覧


一覧を振り返って、卒業研究に傾向のようなものがあるか、確認してみました。
先ず気になったのは、教員の関心に近いテーマの論文です。
「ICT時代における市民ジャーナリズムと『正義』」
「東日本大震災における東北の地方紙の役割」
「四国・愛媛における 道州制の望ましいあり方についての研究  -『スローシティ』と『ボローニャ方式』に学ぶ地方自治のあり方-」
「書店と電子書籍の将来 ~ITと店舗空間を利用した新ビジネスの可能性について~」
「現代日本のフリーペーパーとソーシャルメディアの比較分析 ~広告コンテンツの現状と将来について~」
「『異常気象』に関する新聞報道量の推移に関する研究 —2015年 関東・東北豪雨を事例として—」
など、相対的にオーソドックスなJournalism and Media Studiesの研究に取り組んだ学生は、出版社や新聞社、書店など、メディア関連の企業に内定を得ている場合が多いですね。内定を踏まえ、教員からオーソドックスなテーマで書くことを勧めた側面もありますが、本人のメディアへの関心も元々高かったのだと思います。

次に気になったのは個性的なテーマの研究です。
「ニュースメディアの分析を通した相撲の人気回復に関する研究」
「お酒に関するメディア表象の分析」
「フードファイト報道 ~テレビと漫画、2つのメディアから見る競技性とエンターテイメント性~」
「サブカルチャーから読み解く日本人の宗教観」
「現代日本のジェンダーレス現象と少女漫画の姓に関する表象の研究」
「日本における『ミーハーミュージカル』の功罪と商業演劇・ミュージカルの進むべき道」
など、個々人の趣味を貫いた論文を書いた人は、個性的な進路に向かう傾向が強いです。「フードファイト」とか「日本人の宗教観」とか「ミーハーミュージカル」とか、教員の関心とほど遠いテーマでよく卒論を仕上げたものだと感心します。

その次に気になったのは、論文の大半を占めるWebメディアに関する論文です。私のゼミは情報学部に属しているので、IT系の広告会社やコンテンツ配信会社へ就職する学生が多いのと、3年生向けに教員紹介のインターンをいくつかのIT企業にお願いしている影響があるのだと思います。
「デジタルネイティブ世代が インターネットマーケティングに及ぼす影響について」
「著作権と現代日本のサブカルチャーに関する研究」
「インターネット広告の現状分析とビッグデータの活用について」
「現代日本のOOH広告とWEB広告のクロスメディア分析」
「インターネットを用いた消費活動の普及と若者の消費行動に関する研究」
「消費の「これから」を担う世代の消費傾向から読み解く最新マーケティング事情」
など、全体に質の高い論文が多かったです。
IT系の広告会社やコンテンツ配信会社の就職状況も良好なので、論文の質と相関しているのでしょう。

最後に気になったのは、テーマ設定に迷う学生向けに推奨している、就職先の業界研究に繋がる内容の論文や、住んでいる地域の社会・風土に関する論文です。
「SNSによる地域活性化 ~地域SNSとゆるキャラ~」
「浜岡原発のメディア史」
「京都の観光ニーズに関するメディア分析」
「街コンから見る地方自治体の地域活性化政策 ~『次世代文化都市』宇都宮市の宮コンへの取り組みをケーススタディとして~」
傾向として、出身地域をテーマを選ぶ学生は、公務員や事務職など堅実な進路に向かう傾向が強いですね。私も地方出身者なのでよく分かりますが、家族と地元を大事にして、幸福な人生を歩むことは大切なことなので、論文のテーマとして学びを深めるのはいいことだと思います。

文教大学でゼミを担当して8年、卒業研究を担当して7年が過ぎました。30代前半で着任したときには、キャンパス最年少の専任教員だったと思うのですが、すでに私も40歳です。

若い学生達と関わり、相対的に平均年齢の高い職場にいると、いつまでも「若手」の役割を担うことになっていますが、世間一般では言い逃れのできない「中年」なので、そろそろ「四十にして惑わず」で、仕事と人生の地盤を固める時期かも知れません。

サザエさんで言えば、マスオが28歳、波平が54歳なので、ちょうど中間のキャラ立ちしにくい時期ですが、地道に努力していきたいと思います。今年は単著の出版を予定しています。

文教大学酒井ゼミのページ
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