西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第87回 2019年12月1日)は、森見登美彦の人気作『夜行』を取り上げています。表題は「日常の「闇」描く怪異小説」です。
今週は売れっ子のフリーライター・斎藤哲也さんにゲスト講義でお話を頂きました。 ベストセラー本を数多く手掛け、著名人の対談の構成や本の編集を多く担当されている斎藤さんのお話は、出版業界の最前線の話題といえる充実した内容で、学生たちからも多くの質問が挙がっていました。共著『IT時代の震災と核被害』をご担当頂いて以来のお付き合いです。
今週は売れっ子のフリーライター・斎藤哲也さんにゲスト講義でお話を頂きました。 ベストセラー本を数多く手掛け、著名人の対談の構成や本の編集を多く担当されている斎藤さんのお話は、出版業界の最前線の話題といえる充実した内容で、学生たちからも多くの質問が挙がっていました。共著『IT時代の震災と核被害』をご担当頂いて以来のお付き合いです。
森見登美彦の「夜行」は、日常の中に垣間見える「闇の世界」を描いた都市伝説のような怪談小説です。架空の銅版画家・岸田道生の連作「夜行」と「曙光」を手がかりとして、京都・出町柳の英会話学校に通っていた「長谷川さん」の失踪事件の謎に、恋心を抱いていた「大橋君」が迫っていきます。
5人の仲間たちの話に登場する「奇妙な家」と、そこに導かれて失踪し「顔を失った人々」にまつわる物語は、上田秋成の怪異小説のように、読者を日常の「向こう側」へと誘い、シュールレアリスムの絵画のように、私たちの現実感覚を狂わせていきます。川端康成の「雪国」を下地にしている点も面白いです。
複雑に絡み合った「謎」は、容易な解釈を拒絶するものですが、明瞭な文体で独特の作品世界を築いてきた森見登美彦らしい作品だと思います。