2020/02/12

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第95回 川上未映子『乳と卵』

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第95回 2020年2月9日)は、川上未映子の芥川賞受賞作『乳と卵』を取り上げています。表題は「「母」でも「娘」でもない「わたし」」です。

この小説は現代的な「女性らしさ」について、大阪弁のユーモラスな語り口の「豊胸手術をめぐる問答」を通して、一石を投じていると思います。母娘のすれ違う感情を通して「母」でもなく「娘」でもない「わたし」の存在を突き詰めていく展開は、現代文学らしい野心的なものです。



川上未映子『乳と卵』あらすじ
40歳が間近に迫った巻子は大阪の京橋でホステスとして働きながら、娘の緑子を育てつつ、豊胸手術をしたいと考えている。彼女は離婚した後に、スーパーの事務、工場のパート、レジ打ちや商品梱包の仕事を転々とし、京橋のスナックの仕事と、豊胸手術の願望に行き着いた。「わたし」を媒介として、初潮が間近に迫った緑子と、女性の身体性をめぐる応酬が繰り広げられる。第138回芥川賞受賞作。