西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第2回(2022年8月26日)は、初期の代表作の一つ『ゼロの焦点』について論じています。担当デスクが付けた表題は「映えるグッドクリフ 能登に根を張る人々」です。
この小説は清張が「ブラック清張」と呼ばれるきっかけとなった作品です。清張は黒を題名に取り入れた作品を多く記していますが、本作ではラストシーンで真犯人が日本海に船を出し、「黒い点」となって沈んでいく場面が、読後に鮮烈な印象を残します。しかもこの場面は一人の女性が死に行く暗いものとしてではなく、最後に光り輝く生を全うさせる感動的なものとして描かれています。
『ゼロの焦点』は松本清張が生死を超えた人間の実存に、文学的な価値を見出していることが分かる作品です。清張ファンとして知られるみうらじゅんが、松本清張作品のベストに挙げていたことも頷ける禍々しさです。メディア論、サブカルチャー論の文脈からも清張作品は再評価すべきだと考えています。
西日本新聞me コーナー「松本清張はよみがえる」
https://www.nishinippon.co.jp/theme/matsumoto_seicho/
第2回 『ゼロの焦点』