2025/11/30

産経新聞と週刊読書人の書評

 産経新聞(2025年11月30日)に『福田和也コレクション2』の書評を寄稿しました。タイトルは「快活で繊細な批評集」です。福田和也先生は、「遥かさ」が感じられる批評家でしたので、『福田和也コレクション2』についても書評を掲載できて良かったです。

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 文体を研ぎ澄ました初期の傑作が網羅されているのがうれしい。戦前の東京の下町を描いた長谷川利行の「大火事のような明るさ」から「近代小説のくらさ」に迫る『日本の家郷』。自身の遊芸の限界で覚えた「日本という烙印」に、個人的な体験の総和としての「歴史」を通して挑む『「内なる近代」の超克』。保田與重郎が有していた「悠々とした世界性と浪漫精神」の中に、文業の「空虚それ自体としての遥かさ」を見いだす『保田與重郎と昭和の御代』。何れも平成日本を斬り、昭和日本の核心を突き、近代日本の諸問題に体当たりした代表作である。

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https://www.sankei.com/article/20251130-HJUIW6YBEVJ6ZLKNGZYKRHQSQA/

 あと週刊読書人(3615号)に藤井淑禎著『松本清張と水上勉』の書評を寄稿しました。タイトルは「日本型私小説への批判と克服 戦後日本を代表する2人の大作家の「文学的生涯」」です。前半の表題は本文を採用したもの、後半は編集部が付けたものです。書き出しは下記です。

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「小説は大人の説じゃなくて小人の説なんだ。だから面白く語らなきゃいけないんだ」(「清張さん、ちょっといい話」)と松本清張は水上勉に語っている。水上勉にとって松本清張は、作家として再浮上するヒントをくれた恩人だった。本書は、戦後日本を代表する二人の大衆作家の「文学的生涯」に、主要作を通して迫る。藤井淑禎が述べているように、この二人の作風の差異を分析することは「日本型私小説への批判と克服」について考える上で、興味深い。

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 2025年12月25日に講談社現代新書より『松本清張の昭和』が、1月に朝日新聞出版より単行本が出ます。後者の奥付の発行日は今のところ2026年1月30日です。書籍の詳細については後日、書きます。何れも内容、装丁ともに良い感じに仕上がっています。

2025/11/16

台湾の文芸誌「聯合文學」に寄稿しました

 台湾の文芸誌「聯合文學」のNo.493に「吉田修一作品中的風土與社會現象之考察」という原稿を寄稿しました。吉田修一さんや李相日監督、中村鴈治郎さん、吉沢亮さん、横浜流星さん、渡辺謙さんのインタビューや対談等と一緒にご掲載を頂いております。表紙も目を引く素晴らしいデザインです。

 日本でも入手できるようで、国会図書館のデータベースにも入っていました。私の原稿に合わせて頂いて、長崎の史跡料亭花月や琵琶湖大津館、出石永楽館のイラストも入っています。痒い所に手が届く編集に、感動しました。

目次

https://www.unitas.me/archives/58368




2025/11/14

青柳碧人著『乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO』書評

 青柳碧人さんの『乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO』の書評が西日本新聞(2025年11月1日)に掲載されました。江戸川乱歩の没後60年ということもあり、取り上げてみました。

https://www.nishinippon.co.jp/item/1418498/


 年末に出版予定の本×2冊は、帯文や表紙のデザインも含めて、順調に編集作業が進行しています。出版不況の光明と言えるオーディブルにもできると嬉しいです。

 福田和也先生の命日までに2冊という思いで1年間机に向かってきましたので、ひと区切りという感じがしています。2冊を書き終えるまで、墓参りも控えていましたので、ようやく良いご報告ができます。文芸と春秋(ジャーナリズム)を架橋する内容で、批評の方法論の上でも達成感があります。

 年内の入稿済の原稿は、新聞等の書評が3本、台湾の文芸誌向けの原稿(12枚ほど)、その他、文芸の裏方の仕事など。連載「松本清張がゆく」は、年内にもう一回、掲載予定です。1月には直木賞の予想対談もあります。

 文芸批評は、定期的に成果を本にすることが重要ですので、業績が一段積み上がったところで、先々の仕事の準備(資料集めなど)にも、取り組みたいところです。いくつか大きめの仕事を構想しています。地味な作業の積み重ねが大事だと、改めて実感しています。

2025/11/03

「食と文学」をめぐる白熱講座 酒井信 × 宇野常寛

 宇野常寛さんとPLANETSで対談した動画が公開されました。表題は「なぜ村上春樹の食事はマズそうなのか? 「食と文学」をめぐる白熱講座」です。宇野さんの『ラーメンと瞑想』(ホーム社)に関する内容で、宇野さんの編集者としてのセンスが生きたタイトルだと思います。

 私は村上春樹作品の食事はそれほどマズそうとは思っていないのですが(笑)、それに近い議論を宇野さんとしています。私からは、「食と文学」について正岡子規、向田邦子、林芙美子、村上春樹、福田和也、宮沢賢治、谷崎潤一郎、開高健を参照しながらお話ししました。

 私のお勧めのラーメンとして、青森の麺や西絶豚(ゼットン)のデス煮干し、松本清張が愛した小倉の中国料理・耕治のラーメンとやきめし、武蔵野アブラ學会の油そばを紹介しています。

なぜ村上春樹の食事はマズそうなのか? 「食と文学」をめぐる白熱講座 酒井信 × 宇野常寛

https://www.youtube.com/watch?v=1smRsrRpUek&t=1785s