酒井信/文芸批評・メディア文化論 明治大学/ msakai@meiji.ac.jp/ 『松本清張はよみがえる』『現代文学風土記』など
2025/02/17
BBCのドキュメンタリー2本の監訳(AIと共生するヒト社会、クラウド社会の環境問題/丸善出版)
2025/02/06
松本清張生誕115周年記念 国民作家・松本清張の原風景、小倉
2025年3月2日に小倉の丸善リバーウォーク北九州店で、「松本清張生誕115周年記念 国民作家・松本清張の原風景、小倉」の講演を行います。北九州市立松本清張記念館のご協力を頂いています。私の講演に限らず、学芸担当主任の中川さんとの対談もあり、地域色の強いイベントです。丸善リバーウォーク北九州店には、私と中川さんのお薦めの清張作品も展示されているかと思います。
https://riverwalk.co.jp/event/maruzen_event_05/
このイベントは西日本新聞の文化面でも告知を頂いています。西日本新聞の連載「松本清張がゆく 西日本の旅路」は、今月1回、来月2回の掲載予定です。
https://riverwalk.co.jp/app/wp-content/uploads/2025/01/d7b4243094e692bfbc30f664037267ec.pdf
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第59回スーパーボウルはPhiladelphia Eaglesの勝利で「Fly, Eagles fly」が何度も聞こえてくる好ゲームでした。試合前の取材では、今年もGuillermo Rodriguezが頑張っていました。Saquan Barkleyに「あなたは足が速いですが、なぜ逃げてるんですか?」と聞くなど、笑いました。ABCの Jimmy Kimmel Liveでおなじみの元不法移民で駐車場警備員のメキシコ系コメディアン。彼の活躍そのものがトランプ政権への抗議と言えます。
Guillermo at Super Bowl Media Night 2025
https://www.youtube.com/watch?v=36jvzto3VPw&t=162s
今年のEaglesはOLが史上最大の総体重で、RBが2000ヤード超えのBarkley、WRがA.J.とDevonta、QBがHurtsというオールスター。時間消化すればいい場面でも、ロングパスという狂ったプレーコールで、40代のHCのNick Sirianniが2年前のSB敗戦からよくチームを立て直したと思います(たとえばJets時代は左利きで稼ぎたいとごねていた巨人・Mekhi Bectonを、LTからRGに転向させるとか)。EaglesはDLのラッシュ、DBのZone Coverからのタックルが速く、三連覇予想が多かったAndy Reid-Chiefsを攻守で圧倒していました。ただMahomes-Chiefsも30点以上離されても、Worthyなど若手を軸に20点以上取り返す、将来を感じさせる見事な敗戦でした。
NFL Super Bowl LIX Mic'd Up, "Is Jalen Hurts gonna smile now?" | Game Day All Access
https://www.youtube.com/watch?v=-wv-6dOB4eI&t=159s
今年の中継は順番でFOXでしたが、トランプやスイフトはそれほど映らず、ハーフタイムショーのKendrick Lamarや前夜祭のLady Gagaなど、音楽でバランスをとっていた印象を受けました。Kendrickのハーフタイムショーは含意が深く、アンクル・サムを「超自我」として擬人化させて、メタ認知的に代表曲を批評的にからかいつつ、「good kid, m.A.A.d city」以来の「マイノリティとしての無意識」を深堀りする好パフォーマンスでした。
Kendrick Lamar's Apple Music Super Bowl Halftime Show
https://www.youtube.com/watch?v=KDorKy-13ak
Kendrickは、Not Like Usでグラミー賞のRecord of the YearとSong of the Yearを獲得したので、ピューリッツァー賞も獲ってますし、あとはノーベル文学賞かなという印象。ただアンクル・サムの台詞に表れていたように、自身やHip Hopのジャンルそのものへの危機意識もメタ批評的に表現していました。2015年の「To Pimp a Butterfly」の先を模索しつつ、ピークを過ぎたことも自覚し折り合いをつけ、後輩のSZAに託した思いのようなものを感じました。Lady Gagaみたいに、熱唱系の持ち曲がなく、常に新しいものを求められるのがKendrickの大変なところ。
Lady Gaga performs 'Hold My Hand' ahead of Super Bowl LIX | NFL on FOX
https://www.youtube.com/watch?v=XUw3-6YuJTo
Kendrickのコラボで近年一番良かったのは、WeekendとのPray For Meだと思います。間奏のラップが圧巻で、短文で韻を踏みながら、アメコミ・ヒーロー物への的確なメタ批評を展開しています。
The Weeknd, Kendrick Lamar - Pray For Me (Official Lyric Video)
https://www.youtube.com/watch?v=XR7Ev14vUh8
メディア・ジャーナリズム研究の文脈でいうと、今回のスーパーボウルも、昨年に続いて視聴者数で歴代最高を記録していますが、シーズンとプレイオフの視聴者数は微減しています。おそらく原因は、試合数が増えてプレイオフを見越した消化試合が増えた影響と、DAZNなどのサブスクが増えた影響が大きいと思います(CMなどスポンサーの傾向にも変化が感じられますが、このあたりの詳細は授業で)。あとTom Brady(顎がどんどんひし形化)など大物選手の引退と、ヨーロッパや南米での試合増(サッカーファンの取り込み)もあるので、微減というよりは高止まりと考えた方がいいかもしれません。
The best commercials of Super Bowl 2025
https://www.youtube.com/watch?v=HwqLPn3P4LE
近年、アメリカではNFLだけではなく、カレッジ・フットボールの人気がすさまじく、大学スポーツを超えた「地域を代表するフェスティバル」になっている印象を受けます。NCAAの改革で、有名選手や人気チアが在学中に数億円を稼げる時代。アメリカの大学も生き残りが熾烈で、Oregon大学やLSUなどフットボールで躍進している大学の存在感が増しています。Indianapolisにはカレッジ・フットボール専用のミュージアムもあり、私も「神の子」Tim Tebow(フロリダ大学、パプテスト派)のシャツを来て行ったことがあります。
The BEST College Football Crowds/Atmospheres
https://www.youtube.com/watch?v=t9MbjQcSkpc
近年のカレッジ・フットボールで注目すべきは、Joe Burrow以来、トランスファー(転校)経験のあるスターQBが増えている点だと思います。今年のNFLでもチャンピオンシップに残った4人のQBのうち実に3人がトランスファー経験者(たとえば今年のNFLでMVPをとったJosh Allenは農家から無名大学を経てWyoming大学)。スーパーボウルを獲ったHurtsも、Alabama大学でスターターになれず、Oklahoma大学に転校してドラフト2巡の評価でした。将来のある選手に、新しい環境で再起のチャンスが与えられることは、リーグの活性化につながり、長い目でいいことなのだと思います。
How A Small-Town Farmer Became An NFL Superstar
2025/01/26
「松本清張がゆく 西日本の旅路」第12回 『実感的人生論』 旧小倉市立記念図書館(北九州市)
西日本新聞の連載「松本清張がゆく 西日本の旅路」第12回(2025年1月26日)は、松本清張の代表的な随筆集『実感的人生論』を取り上げました。担当デスクが付けた表題は「学歴克服のエネルギー源」です。高等小学校卒で国民作家となった清張のバイタリティが感じられる作品です。
本作には高等小学校を卒業後、給仕として働いた清張らしい人間観が記されています。人間は目的そのものであり、手段としてのみ使用されるべきではない、といった内容の、カントの『実践理性批判』に近いアフォリズムも記されています。
連載第11回の「父系の指」で、清張が中学校に行けず、学歴には恵まれなかった経緯について記しましたが、松本清張は1922年に開設された小倉市立記念図書館に通い、独学で文学的な素養を身に着けました。円本ブームも思春期に経験しており、松本清張の文学的な素養は推理小説に限らず、大正10年代から昭和にかけての出版文化の総体に、影響を受けたものだったと言えます。
実家が貧しかった清張にとっては、徒歩圏内に新しい図書館があり、古今東西の作品を無償で乱読できたことが大きかったと思います。「私のくずかご」という随筆が収録されていますが、本作は菊池寛が「文藝春秋」に記していた随筆「話の屑籠」から影響を受けたものです。メディア史的な観点からみても面白い記載があります。
なお全集の月報などに記載のとおり、清張の長男の陽一さんは、小倉から上京した後、慶應義塾大学に入学され、その後電通に就職されており、清張は子供を通して「学歴克服」を果たしたとも言えるかも知れません。
2025/01/15
第172回直木賞展望
西日本新聞朝刊(2025年1月15日)に、第171回直木賞展望(西田藍さんとの対談記事)が掲載されました。今回の候補作は何れも読み応えがあり、1位が伊与原新さんの『藍を継ぐ海』、2位が月村了衛さんの『虚の伽藍』、3位が木下昌輝さんの『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』という評価です。西田さんと女性の担当記者の双方が、仏教版の仁義なき戦い『虚の伽藍』を1位に挙げていたのが興味深かったです。対談用の3作品のメモ(本文の内容とは異なります)は下記です。
Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/00943c124af962cd498614d59b525f4592d449e2
第172回直木賞展望 対談 酒井信さん 西田藍さん【きょう15日選考】
月村了衛「虚の伽藍」現代が生んだ悪の主人公、伊与原新「藍を継ぐ海」地方舞台にした科学小説
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1303792/
伊与原新『藍を継ぐ海』
・地学の知識を生かした各短編の完成度が高い。「人類が最初に手にした鉄は、鉄隕石だと言われているんですよ」といったトリビアにも、人間存在について考えさせる深みがある。
・科学教育に重点が置かれている時代に、地学を主とした科学的知見を生かした著者の小説の価値は高いと思う。海外では元科学者のSF作家は珍しくない。
・日本の辺境と言える「地方」を舞台にした短篇が何れも魅力的。萩市の北西に浮かぶ見島の地質と萩焼の関係の深さを下地にした「夢化けの島」、絶滅したとされるニホンオオカミが混血の「狼混」として生き残る吉野村を舞台にした「狼犬ダイアリー」、長崎の長与町の空き家で見つかった原爆資料と記録をめぐる「祈りの破片」、北海道の野知内に落ちた隕石とアイヌの伝承を描いた「星隕つ駅逓」、徳島の浜辺のウミガメの産卵と「藍色の潮」の関係を描いた「藍を継ぐ海」、何れも優れた作品である。
・狼が人間と共生する道を選び、犬となり、氷河期を共に生き延びたといった時間的スケールの大きな描写が、現代日本の「地方」を舞台にした物語の密度を高めている。
・科学小説をSFとは異なる形で、現代日本の風土をもとにして展開した著者の筆力は優れたもので、本作は前回のノミネート作『八月の銀の雪』と比べても、「地方」を舞台とした作品の描写に深みがあり、文学性が高い。
月村了衛『虚の伽藍』
・伝統仏教の最大宗派と言われる「錦応山 燈念寺派」内部の政治抗争を、ヤクザや裏社会との濃密な関係を軸に、志方凌玄の出世劇としてコミカルに描く。
・名探偵役は、総貫首への出世を目指す、裏社会との関りの深い凌玄と、京大の経済学者から若頭となった氷室。戦国時代の物語のようでもあり、現代版「仁義なき戦い」のようでもある。
・宗教団体を描いた現代文学の傑作として、高橋和巳の『邪宗門』や松本清張の『神々の乱心』が思い浮かぶ。何れも宗教団体を軸にしながら、混乱を極める社会情勢(昭和維新など)を背景とした政治劇でもあった。
・本作は現代の京都を舞台に、寺社が土地開発に関与し、仏像の盗難事件に関与するなど、現代的な政治劇を描いている点が新鮮。『地面師たち』など土地開発をめぐる大衆小説が人気を集めているが、この小説もその系譜の作品。ここ数十年の京都駅周辺は、急速に開発が進んだ印象。
・全国各地の寺院や学校法人を傘下に持ち、巨大な「官僚組織」となった「燈念寺派」の内部抗争を、京都のヤクザや信用金庫、不動産業者、京大閥、寺社閥、市役所、政治家、韓国系の犯罪組織など、現代社会の様々なアクターとの関係から紡いでいる点が良い。
・「洛中のことは洛中で始末をつける」など、京都の政治的な風土も上手く描けている。
・この小説を読むと、京都の寺院の見え方が変わる。宗教を利用したマネーロンダリングは、世界的に見られるものであり、現代文学らしい題材だと思う。
木下昌輝『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』
・時代小説としてテーマ、物語、描写が洗練されている。徳島藩(阿波国・淡路国)の蜂須賀家、10代藩主・重喜(しげよし)の藩政改革、藍政改革をめぐる内容。
・吉野川流域で獲れる藍が特産物で、品質が良く、重喜の改革により、藍商人が育成され、藩の大きな収入源となった。藩内部の政争と、藍玉をめぐる大阪商人との競争が小説の軸となる。
・大阪商人から搾取される藍作人の窮状、大阪商人の資金力・政治的なネットワークの強さを描きつつ、困難を乗り越え、徳島藩が藍大市を開催するに至る歴史を上手く描けている。
・人物の描写が上手く、特に読書家であり、遊び人でもあった重喜の奥行きのある性格や、教養に基づく改革の描写が、読者を惹き付ける。老中や改革派の忠兵衛、内蔵助、藤九郎の人物描写も上手い。
・一代限りの養子、順養子として佐竹家から蜂須賀家に迎えられ、いわゆる主君押し込めで、隠居を迫られる経緯が、無駄なく、物語として展開されている。分量に比して内容豊富。
・藍という競争力のある特産品の存在が、重喜の改革劇を魅力的なものとして特徴付けている。著者の筆力の高さが伝わってくる歴史小説。
2024/12/26
福田和也先生・追悼文
ユリイカ(2025年1月臨時増刊号)の「総特集・福田和也」に「福田和也という人――奇妙な廃墟の「中の人」の信仰心」という批評文と「福田和也主要著作解題」「福田和也単著一覧」を寄稿しました。493ページ、定価3080円の大ボリュームで、平成を代表する批評家・福田和也の追悼特集に相応しい内容です。ページをめくりながら、様々なことを思い出し、涙がこぼれました。福田和也先生と時間を共にすることができて幸運でした。ご多忙の中、ご寄稿を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3999&status=published
三田評論(2024年12月号)に「平成を代表する批評家――福田和也先生を偲ぶ」という記事を寄稿しました。「追想」欄に、安西祐一郎先生、山内慶太先生の記事と共にご掲載を頂いています。福田和也先生の慶應SFCでの面影について綴った文章です。告別式の後、骨を拾い続けている気持でいます。
三田評論 明治31年から続く慶應義塾の機関誌
https://www.keio-up.co.jp/mita/
「文學界」(2024年11月号)に福田和也先生の追悼文を寄稿しました。表題は「福田和也という人 文化保守の情感」です。文学を愛した福田先生へのはなむけとして、「文芸葬」ができて良かったです。『江藤淳は甦える』の著者の平山周吉さんの追悼文と並んで掲載されています。江藤淳が亡くなった時、江藤と最後に会い、自裁の報を聞いて「文學界」で特集を組み、福田先生から「江藤淳の文学と自決」を受け取った編集者が、平山さんでした。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/49100770711472024
宇野常寛さんとの「僕たちは福田和也が遺したものから何を引き継ぐべきなのか?」という対談が、PLANETS YouTubeチャンネルで公開されました。
https://www.youtube.com/watch?v=AH90yh3KGJw
収録したのが追悼文を続けて入稿した後で、通夜の前だったので、まだ原稿を書いた勢いで明るく話せましたが、通夜と告別式を終えた直後だと、メンタル面で、やや厳しかったかも知れません。
精進落としの席でたまたま隣の席だった島田雅彦さんが、編集者からのビールの勧めに「痛風なので」とおっしゃって断られていたので(ご著書の『散歩哲学』でも痛風について触れられていました)、若々しく見える島田さんも色々あるのだなあ、と思った数秒後に、日本酒をぐびぐび飲まれていました。若さと健康の秘訣を伺ったところ、「懸垂をやるぐらいですかね」とのご回答だったので、私も「懸垂」をやろうと思います。福田先生は、音楽や落語、小説の朗読を聞きながら「散歩」をやっていましたが、「懸垂」はやっていませんでした。福田先生と島田さんの『世紀末新マンザイ パンク右翼vs.サヨク青二才』の裏話などが聞けて、有難い時間でした。
西日本新聞(2024年9月26日)に福田和也先生の追悼文をカラーで掲載頂きました。福田先生のご両親のルーツが共に佐賀ということもあり、ブロック紙の文化欄のトップに寄稿できて良かったです。大きな写真が私が福田先生と最初にお会いした翌年の2000年のもので、私と一緒に映っている小さな写真が2019年の小林秀雄賞のときのものです(改めて写真を見ると、体調悪いのに、赤ワインを飲んでるじゃないですか、先生!)。
福田和也先生とは、ホテルオークラでお話したのが最後になりましたが、お別れのご挨拶のようなものは、その時のやり取りや、産経新聞やYahoo!ニュース、KKベストセラーズやエキサイトニュースなどの、最後の3冊の書評などでできたかな、と思いつつも、思ったよりも早くその時が来て、心の整理が付いていない、というのが正直なところです。
平成期の日本の文芸の発展に、大きな貢献をされた先生だったと思います。私が身近に接した往時の福田先生は、昼夜を問わず、猛烈な勢いで仕事をされ、文芸を中心とした価値判断にいつも真剣で、ピリピリとした緊張感のある、凄い人でした。慶應SFCの存在を広く伝えるのにも大きな貢献をされました。
2024年9月29日に行われたお別れの会・通夜では角川春樹さんや重松清さん、告別式では文藝春秋の飯窪社長が、心のこもった弔辞を読まれ、往時の福田先生を偲ぶことができました。通夜や葬儀では、島田雅彦さん、原武史先生、『地面師たち』で注目を集めるゼミOBの作家・新庄耕さん、文芸ジャーナリズムに関わる出版各社の編集者の方々、ゼミの卒業生など、福田先生と親交のあった皆さまが、お別れをされていました。久しぶりにお会いした方々ともお話ができ、嬉しかったです。
矢作俊彦さん、柳美里さん、リリーフランキーさん、古市憲寿さん、出産を控えていたゼミOGの作家・鈴木涼美さんなど、一線で活躍されている書き手の皆さまの献花も、祭壇を彩っていました。
「新潮」(2024年12月号)の「追悼・福田和也」もお勧めです。島田雅彦さんと柳美里さんの心に沁みる追悼文が読めます。島田さんの追悼文は読売新聞も含めて迫力があり、熱い友情を感じました。『石に泳ぐ魚』をめぐる柳さんと福田先生のエピソードは初耳でした。初めて私が「週刊SPA!」に寄稿した書評が柳さんの『石に泳ぐ魚』(2002年)でしたが、掲載後に柳さんから編集部に丁寧なお礼を頂いた経緯が、よく分かりました。大澤信亮の文章も川端論を切り口に「空虚さ」と対峙していて面白かったです。福田先生と大澤と「たいめいけん」に行ったのは覚えていますが、あの時、先生が床に落とした箸を拾って食べていたとは(笑)
「週刊読書人」の新庄耕さん、風元正さん、明石健五さんの追悼文も、往時の面影が感じられて良かったです。誰かが書いた福田先生の追悼文をずっと読んでいたいです。
鈴木涼美さんゲストの「追悼・福田和也」の動画や、浜崎洋介さん、與那覇潤さん、辻田真佐憲さんの「追悼 伊藤隆・福田和也・西尾幹二」の動画も良い内容でした。
物書きの友人や編集者の方々からも多くの励ましを頂き、心の支えになりました。下の最後の3冊の書評はよく知己の編集者に「追悼文っぽい」「生前葬だね」と(冗談半分で)言われていましたが、そうなるかも知れない、という予期の中で書いていました。福田先生を介してご厚誼を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。
『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』書評/「奇妙な廃墟に聳える邪宗門」
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/945463/
https://www.excite.co.jp/news/article/BestTimes_00945463/
福田和也著『放蕩の果て 自叙伝的批評集』書評/産経新聞
https://www.sankei.com/article/20231029-GVOYPZDBAVK3XBTHLU63ICG56M/
福田和也著『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書評/「日常を文化とする心」
https://www.sankei.com/article/20230604-UB3SVSVSOFPZXM6ERJOD36HZUU/
産経新聞 この本と出会った 『風土 人間学的考察』和辻哲郎著 思い出す恩師の福々しい笑顔
https://www.sankei.com/article/20170402-DHL4URE7EFPHXMYXCMSCX6WYIY/
三田評論 【執筆ノート】『松本清張はよみがえる──国民作家の名作への旅』
https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/literary-review/202406-2.html
ユリイカ「総特集・福田和也」(2025年1月臨時増刊号)に寄稿しました
ユリイカ(2025年1月臨時増刊号)の「総特集・福田和也」に「福田和也という人――奇妙な廃墟の「中の人」の信仰心」という論考と「福田和也主要著作解題」「福田和也単著一覧」を寄稿しました。論考の方は、指定の文字数を大幅に超えたので、20枚ほど削り、解題も、分量が多くなったので、特に読んでほしい15冊に絞りました。書籍などで機会があれば、長めの論考や解題、共著を含む全著作の一覧(作成済)も、活字にしたいと考えています。
493ページ、定価3080円の大ボリュームで、平成を代表する批評家・福田和也の追悼特集に相応しい内容だと思います。ページをめくりながら、様々なことを思い出し、涙がこぼれました。追悼文の寄稿はこれでひと段落で、書きたいことがひと通り書けて、一安心しています。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3999&status=published
福田和也先生と時間を共にすることができて幸運でした。ご多忙の中、ご寄稿を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。「福田和也という人――奇妙な廃墟の「中の人」の信仰心」は、「文學界」の追悼文から、もう一歩、際どいところに踏み込んだ内容です。
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藤野眞功さんが「ユリイカ 総特集・福田和也」について、良いレビューを書かれていました。「抗いつつ、血みどろでも機嫌よく生きるのだ。死んだ福田をただ悼むのではなく、今わの際まで面白くやるために生きようとする連中の熱に当てられてよかった」と。私の批評文にも言及を頂き、ありがとうございます。
集英社オンライン 「平成」と伴走した最強の批評家、福田和也とは何者だったのか?
2024/12/22
「松本清張がゆく 西日本の旅路」第11回 『父系の指』 矢戸(鳥取県)
2024/12/16
北海道新聞・西日本新聞 円城塔『コード・ブッダ』書評
北海道新聞(2024年12月15日)に円城塔さんの『コード・ブッダ』の書評を寄稿しました。担当記者が付けたタイトルは「AIと信仰 禍々しい魅力」です。本作は、チャットボットを模した文体で、信仰の起源と未来を同時に問いながら、作品の全体が「機械仏教の教典」のようになっている点が良いと思いました。作品の外部性に着目した内容です。文芸誌連載の「純文学」らしい作品で、「現代的な信仰」をテーマとした小説が、個人的に好きなのだと思います。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1101102/
直木賞の候補作が発表になり、過去の直木賞対談(西日本新聞)で高く評価した作家では、伊与原新さんと朝倉かすみさんの新作がノミネートされています。家族で長崎に帰省しながら、5作を読むのを楽しみにしています(娘が電車が好きなので、片道8時間、途中下車の旅)。
「松本清張がゆく 西日本の旅路」は年内はあと一回(第11回)の掲載で、松本清張記念館の「松本清張研究」にも25枚ほど寄稿しました。「ユリイカ」の総特集・福田和也は12月27日発売で、論考30枚、解題20枚、著作一覧15枚を寄稿しました。3080円の分厚さで、他の著者の原稿を読むのを楽しみにしています。(私は福田和也の「信仰」について書きました。「文學界」の追悼文から、もう一歩、際どいところに踏み込んだ内容です)
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3999
書籍の企画が無事通り、半年ほどかけてゆっくりと取り組むのですが、年内に一章を書き切れるかどうか。今年の仕事のたな卸しをしながら、来年の仕事の見通しを付けたいところ。
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西日本新聞朝刊(2025年1月11日)にも、北海道新聞に寄稿した円城塔さんの『コード・ブッダ』の書評が掲載されました。北海道新聞と西日本新聞の契約に基づく転載です。
2024/12/04
三田評論に福田和也先生の追悼文を寄稿しました
三田評論(2024年12月号)に「平成を代表する批評家――福田和也先生を偲ぶ」という記事を寄稿しました。「追想」欄に、安西祐一郎先生、山内慶太先生の記事と共にご掲載を頂いています。福田和也先生の慶應SFCでの面影について綴った文章です。
福田先生は保守の論客というイメージが強いですが、大学の授業では政治的な偏りを示すことはありませんでした。大学院生だった私が「はじめてのお使い」で「CD-ROM版 マルクス=エンゲルス全集」(当時34万円)を、代々木の日本共産党近くの書店に買いに行った時の思い出などを記しています。
ご推薦を頂いた先生方、編集部の皆さま、福田和也研究会の活動にご助力を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。
三田評論 明治31年から続く慶應義塾の機関誌
2024/11/24
「松本清張がゆく 西日本の旅路」第10回 啾啾吟 佐賀城跡
西日本新聞の連載「松本清張がゆく 西日本の旅路」第10回(2024年11月24日)は、文藝春秋の「オール讀物」の新人盃で佳作となった、初期の代表作の一つ「啾啾吟」を取り上げました。担当デスクが付けた表題は「「2度目のデビュー作」の舞台」です。
幕末に「鍋島藩」の家老の息子として生れた松枝慶一郎が、明治維新を経て、イギリスで民政と法制の調査に派遣され、政府内で出世していく姿を描いた作品です。表題は、維新の志士が好んだ王陽明の詩から採られています。
松本清張の最初の書籍は、「啾啾吟」を含む『戦国権謀』でした。この単行本は発行部数が少なく、現在も古書店で、高値で販売されています。
年内の連載はあと一回の掲載です。12月は「三田評論」と「ユリイカ」に寄稿しています。新聞書評も一本。松本清張については、本連載と同時進行で、大きめの仕事を準備しています。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1285430/
中央公論の2024年12月号「書苑周遊 新刊この一冊」に寄稿した、先崎彰容さんの新刊『批評回帰宣言——安吾と漱石、そして江藤淳』の書評が、中央公論のオンライン版とYahoo!ニュースにも掲載されました。
中央公論.jp
https://chuokoron.jp/culture/125954.html
Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/b3a33c898fa29b66238fd800b0659d9b3b2096bb
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次のスーパーボウルのハーフタイムショーはKendrick Lamarです。新曲のNot Like Usにレフリーのような人が出ていたので、妙に納得。2022年は、BLM運動のテーマソングのAlrightを歌い、サプライズでした。Dr.Dreは音楽とヘッドフォン事業で成功しつつ、プロデューサーとしてKendrickやEminemを育てたのが偉いです。
Kendrick Lamar. Super Bowl LIX Halftime Show
https://www.youtube.com/watch?v=oIEKK_j0fss
Dr. Dre, Snoop Dogg, Eminem, Mary J. Blige, Kendrick Lamar & 50 Cent FULL Pepsi SB LVI Halftime Show
https://www.youtube.com/watch?v=gdsUKphmB3Y
New Orleansでは、「Beyonceと停電」以来の開催。今年もMahomesのKansas Cityが強いかな、と思いますが、足の調子がいまいち。「幽霊が見える」と言ってJetsを出て、修行を重ねたDalnoldのMinnesotaが調子よく、シーズン全敗で財政破綻もしたDetroitも、Goffのルサンチマンで好調。キッカーが伝統的に呪われているBuffaloも、農家→Wyoming大学→タフガイのAllenが万全。どのチームが勝ち上がっても、面白い後半戦になりそう。
How Cursed Were The Detroit Lions Actually ?
https://www.youtube.com/watch?v=Lc2qtX94Xdo
カレッジ・フットボールは混戦で、昨年はMichiganがチャンピオンでしたが、今年はプレイオフの枠が12チームに拡大したので、色々なチームにチャンスがありそう。個人的には、陰謀論に負けないでという願いを込めて、都市部の大学だけでなく、宗教系や地方の大学も応援しています。フットボールとチキン・ウイングの季節が到来。今後の展開が楽しみ。
2024 ESPN COLLEGE FOOTBALL ANTHEM: Get By by Jelly Roll
https://www.youtube.com/watch?v=KucCs85_siQ
Wing Pit - SNL
https://www.youtube.com/watch?v=ISBJyhughBo
あとLA28のオリンピックイベントに、Red Hot Chili Peppersが出てて、面白かったです。60歳超え3人のバンドとは思えないパフォーマンス。Anthonyの韻を踏む言葉遊びと、復帰したFruscianteが使うヴィンテージ・ギターの音がロングビーチに合います。かつてロックでもラップでもない、黒人音楽の模倣だと誹謗中傷を受けたバンドも、40年近くプロとして踏ん張っていると、LAとアメリカの自由を象徴する存在に。ここのところ寒いので、SFとLA, SDの間の海沿いの町(Carmel, Santa Barbara, San Clementeあたり)に行きたい。
The Red Hot Chili Peppers perform at the #Paris2024 Closing Ceremony!
https://www.youtube.com/watch?v=3KgKoyaDgN4
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原稿が一区切りしたところで、5年目のLenovoの内蔵バッテリーを交換しました。公式アウトレットで11万ぐらいで買い、RAMを24GBまで増やしたPCですが、新型コロナ禍も乗り切り、依然として快調。エアダスターで内部清掃をしながら思いましたが、バッテリーやSSDよりも、冷却ファンの劣化が先に来そう。次はGPU入りの15万円ぐらいのノートPCを改造して、動画編集を快適にしたいと考えています。円安でもハイスペックのPCや部品が安く、スマホのバッテリーも交換しましたが、深圳の技術革新の速さを感じます。
BBCの監訳がIT関連で、色々と考えさせられました。国産スマホやPCのコスパの悪さや、ハイエンドモデルの少なさは、どうにかしてほしいものです。重電のサーバーは、セキュリティ上、行政が守るのだと思いますが、性能の高まったPCやスマホも、サーバーのようなものでは、と。PCはマウスコンピューターかLenovoの米沢モデル、スマホはarrows(Lenovoが買収)を買うしかないのかも。
AMD Ryzen™ AI technology is Built-in: Experience the Future of Windows Laptops
https://www.youtube.com/watch?v=xzUOhkqAItM
「arrows漂流記#1 自律神経+タフネス」篇