西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第34回(2018年11月18日)は、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』について論じています。表題は「近未来舞台 監視社会を風刺」です。
暗殺をテーマとした小説は様々なジャンルでありますが、「ゴールデンスランバー」は日本で多くの読者に読まれた作品の一つだと思います。4年ほど前に韓国では、安重根が現代に蘇って日本の総理大臣を暗殺するという内容の「安重根、安倍を撃つ」が話題となりました。日本でも「仁義なき戦い」で知られる笠原和夫が脚本を書いた「日本暗殺秘録」のように、暗殺の歴史を描いた名作映画は存在しますが、暗殺を主題とした小説で広く読まれた作品は珍しいと思います。
一見すると現代日本を舞台にした首相暗殺事件は非現実的なものに見えます。ただ戦前の総理大臣の経験者のうち、6名が暗殺で命を落としていることを考えれば、現代日本でも「暗殺事件」を通して、その背後にある政治権力の闇と向き合う「文学的な想像力」は必要なものだと思います。現代日本が、別の社会秩序に支配されるかも知れないという現実感の中で、監視社会化が進行した社会秩序のあり方に疑問を投げかける「社会風刺」の力に満ちた作品です。
暗殺をテーマとした小説は様々なジャンルでありますが、「ゴールデンスランバー」は日本で多くの読者に読まれた作品の一つだと思います。4年ほど前に韓国では、安重根が現代に蘇って日本の総理大臣を暗殺するという内容の「安重根、安倍を撃つ」が話題となりました。日本でも「仁義なき戦い」で知られる笠原和夫が脚本を書いた「日本暗殺秘録」のように、暗殺の歴史を描いた名作映画は存在しますが、暗殺を主題とした小説で広く読まれた作品は珍しいと思います。
一見すると現代日本を舞台にした首相暗殺事件は非現実的なものに見えます。ただ戦前の総理大臣の経験者のうち、6名が暗殺で命を落としていることを考えれば、現代日本でも「暗殺事件」を通して、その背後にある政治権力の闇と向き合う「文学的な想像力」は必要なものだと思います。現代日本が、別の社会秩序に支配されるかも知れないという現実感の中で、監視社会化が進行した社会秩序のあり方に疑問を投げかける「社会風刺」の力に満ちた作品です。