2018/11/04

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第32回 吉田修一「国宝」

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第32回(2018年11月4日)は、吉田修一の『国宝』について論じています。表題は「原点回帰 主人公に自身投影」です。写真は長崎・丸山の料亭「花月」です。

福岡ソフトバンクスホークスの優勝の方にカラーページが割かれていますので、連載をはじめて以来、2回目の白黒ページです。
それにしても近年のソフトバンクは強いですね。今年の年俸総額が63.2億円で全球団中1位、2位の読売巨人が46.2億円、8位の広島が26.9億円ですので、納得という感じです。孫正義の「読売を超える」という執念が、年俸の総額に表れている気がします。

話を本題に戻すと、吉田修一は数多くの長崎を舞台にした作品を記していますが、近年の作品になるにつれて実家の近くの長崎の丸山から遠ざかる傾向にありました。『国宝』は、作家生活20年を迎えた吉田修一が、自己の作家の原点となる長崎の丸山に回帰し、自分自身を喜久雄の姿に投影しながら、文学という「伝統芸能」を後世に伝える覚悟を示した傑作だと思います。

吉田修一『国宝』についての批評文は、色々な媒体で書いてきました。『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』(左右社、2018年9月)、「小説トリッパー」掲載の「『からっぽ』な身体に何が宿るか ——吉田修一『国宝』をめぐって」(朝日新聞出版、2018年9月)、「文學界」掲載の「歌舞伎をその可能性の中心で『脱構築』する」(文藝春秋、2018年10月)。どれも内容や論じる角度を変えて記載しておりますので、ぜひ合わせてご一読頂ければ幸いです。