2024/12/26

福田和也先生・追悼文

 ユリイカ(2025年1月臨時増刊号)の「総特集・福田和也」に「福田和也という人――奇妙な廃墟の「中の人」の信仰心」という批評文と「福田和也主要著作解題」「福田和也単著一覧」を寄稿しました。493ページ、定価3080円の大ボリュームで、平成を代表する批評家・福田和也の追悼特集に相応しい内容です。ページをめくりながら、様々なことを思い出し、涙がこぼれました。福田和也先生と時間を共にすることができて幸運でした。ご多忙の中、ご寄稿を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3999&status=published

 三田評論(2024年12月号)に「平成を代表する批評家――福田和也先生を偲ぶ」という記事を寄稿しました。「追想」欄に、安西祐一郎先生、山内慶太先生の記事と共にご掲載を頂いています。福田和也先生の慶應SFCでの面影について綴った文章です。告別式の後、骨を拾い続けている気持でいます。

三田評論 明治31年から続く慶應義塾の機関誌

https://www.keio-up.co.jp/mita/

「文學界」(2024年11月号)に福田和也先生の追悼文を寄稿しました。表題は「福田和也という人 文化保守の情感」です。文学を愛した福田先生へのはなむけとして、「文芸葬」ができて良かったです。『江藤淳は甦える』の著者の平山周吉さんの追悼文と並んで掲載されています。江藤淳が亡くなった時、江藤と最後に会い、自裁の報を聞いて「文學界」で特集を組み、福田先生から「江藤淳の文学と自決」を受け取った編集者が、平山さんでした。

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/49100770711472024



 宇野常寛さんとの「僕たちは福田和也が遺したものから何を引き継ぐべきなのか?」という対談が、PLANETS YouTubeチャンネルで公開されました。

https://www.youtube.com/watch?v=AH90yh3KGJw

 収録したのが追悼文を続けて入稿した後で、通夜の前だったので、まだ原稿を書いた勢いで明るく話せましたが、通夜と告別式を終えた直後だと、メンタル面で、やや厳しかったかも知れません。

 精進落としの席でたまたま隣の席だった島田雅彦さんが、編集者からのビールの勧めに「痛風なので」とおっしゃって断られていたので(ご著書の『散歩哲学』でも痛風について触れられていました)、若々しく見える島田さんも色々あるのだなあ、と思った数秒後に、日本酒をぐびぐび飲まれていました。若さと健康の秘訣を伺ったところ、「懸垂をやるぐらいですかね」とのご回答だったので、私も「懸垂」をやろうと思います。福田先生は、音楽や落語、小説の朗読を聞きながら「散歩」をやっていましたが、「懸垂」はやっていませんでした。福田先生と島田さんの『世紀末新マンザイ パンク右翼vs.サヨク青二才』の裏話などが聞けて、有難い時間でした。

 西日本新聞(2024年9月26日)に福田和也先生の追悼文をカラーで掲載頂きました。福田先生のご両親のルーツが共に佐賀ということもあり、ブロック紙の文化欄のトップに寄稿できて良かったです。大きな写真が私が福田先生と最初にお会いした翌年の2000年のもので、私と一緒に映っている小さな写真が2019年の小林秀雄賞のときのものです(改めて写真を見ると、体調悪いのに、赤ワインを飲んでるじゃないですか、先生!)。


 福田和也先生とは、ホテルオークラでお話したのが最後になりましたが、お別れのご挨拶のようなものは、その時のやり取りや、産経新聞やYahoo!ニュース、KKベストセラーズやエキサイトニュースなどの、最後の3冊の書評などでできたかな、と思いつつも、思ったよりも早くその時が来て、心の整理が付いていない、というのが正直なところです。

 平成期の日本の文芸の発展に、大きな貢献をされた先生だったと思います。私が身近に接した往時の福田先生は、昼夜を問わず、猛烈な勢いで仕事をされ、文芸を中心とした価値判断にいつも真剣で、ピリピリとした緊張感のある、凄い人でした。慶應SFCの存在を広く伝えるのにも大きな貢献をされました。

 2024年9月29日に行われたお別れの会・通夜では角川春樹さんや重松清さん、告別式では文藝春秋の飯窪社長が、心のこもった弔辞を読まれ、往時の福田先生を偲ぶことができました。通夜や葬儀では、島田雅彦さん、原武史先生、『地面師たち』で注目を集めるゼミOBの作家・新庄耕さん、文芸ジャーナリズムに関わる出版各社の編集者の方々、ゼミの卒業生など、福田先生と親交のあった皆さまが、お別れをされていました。久しぶりにお会いした方々ともお話ができ、嬉しかったです。

 矢作俊彦さん、柳美里さん、リリーフランキーさん、古市憲寿さん、出産を控えていたゼミOGの作家・鈴木涼美さんなど、一線で活躍されている書き手の皆さまの献花も、祭壇を彩っていました。

「新潮」(2024年12月号)の「追悼・福田和也」もお勧めです。島田雅彦さんと柳美里さんの心に沁みる追悼文が読めます。島田さんの追悼文は読売新聞も含めて迫力があり、熱い友情を感じました。『石に泳ぐ魚』をめぐる柳さんと福田先生のエピソードは初耳でした。初めて私が「週刊SPA!」に寄稿した書評が柳さんの『石に泳ぐ魚』(2002年)でしたが、掲載後に柳さんから編集部に丁寧なお礼を頂いた経緯が、よく分かりました。大澤信亮の文章も川端論を切り口に「空虚さ」と対峙していて面白かったです。福田先生と大澤と「たいめいけん」に行ったのは覚えていますが、あの時、先生が床に落とした箸を拾って食べていたとは(笑)

「週刊読書人」の新庄耕さん、風元正さん、明石健五さんの追悼文も、往時の面影が感じられて良かったです。誰かが書いた福田先生の追悼文をずっと読んでいたいです。

 鈴木涼美さんゲストの「追悼・福田和也」の動画や、浜崎洋介さん、與那覇潤さん、辻田真佐憲さんの「追悼 伊藤隆・福田和也・西尾幹二」の動画も良い内容でした。

 物書きの友人や編集者の方々からも多くの励ましを頂き、心の支えになりました。下の最後の3冊の書評はよく知己の編集者に「追悼文っぽい」「生前葬だね」と(冗談半分で)言われていましたが、そうなるかも知れない、という予期の中で書いていました。福田先生を介してご厚誼を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。

『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』書評/「奇妙な廃墟に聳える邪宗門」

https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/945463/

https://www.excite.co.jp/news/article/BestTimes_00945463/

福田和也著『放蕩の果て 自叙伝的批評集』書評/産経新聞

https://www.sankei.com/article/20231029-GVOYPZDBAVK3XBTHLU63ICG56M/

福田和也著『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書評/「日常を文化とする心」

https://www.sankei.com/article/20230604-UB3SVSVSOFPZXM6ERJOD36HZUU/


産経新聞 この本と出会った 『風土 人間学的考察』和辻哲郎著 思い出す恩師の福々しい笑顔

https://www.sankei.com/article/20170402-DHL4URE7EFPHXMYXCMSCX6WYIY/

三田評論 【執筆ノート】『松本清張はよみがえる──国民作家の名作への旅』

https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/literary-review/202406-2.html

ユリイカ「総特集・福田和也」(2025年1月臨時増刊号)に寄稿しました

 ユリイカ(2025年1月臨時増刊号)の「総特集・福田和也」に「福田和也という人――奇妙な廃墟の「中の人」の信仰心」という論考と「福田和也主要著作解題」「福田和也単著一覧」を寄稿しました。論考の方は、指定の文字数を大幅に超えたので、20枚ほど削り、解題も、分量が多くなったので、特に読んでほしい15冊に絞りました。書籍などで機会があれば、長めの論考や解題、共著を含む全著作の一覧(作成済)も、活字にしたいと考えています。

 493ページ、定価3080円の大ボリュームで、平成を代表する批評家・福田和也の追悼特集に相応しい内容だと思います。ページをめくりながら、様々なことを思い出し、涙がこぼれました。追悼文の寄稿はこれでひと段落で、書きたいことがひと通り書けて、一安心しています。

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3999&status=published

 福田和也先生と時間を共にすることができて幸運でした。ご多忙の中、ご寄稿を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。「福田和也という人――奇妙な廃墟の「中の人」の信仰心」は、「文學界」の追悼文から、もう一歩、際どいところに踏み込んだ内容です。

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 藤野眞功さんが「ユリイカ 総特集・福田和也」について、良いレビューを書かれていました。「抗いつつ、血みどろでも機嫌よく生きるのだ。死んだ福田をただ悼むのではなく、今わの際まで面白くやるために生きようとする連中の熱に当てられてよかった」と。私の批評文にも言及を頂き、ありがとうございます。

集英社オンライン 「平成」と伴走した最強の批評家、福田和也とは何者だったのか?

https://shueisha.online/articles/-/252747#goog_rewarded

2024/12/22

「松本清張がゆく 西日本の旅路」第11回 『父系の指』 矢戸(鳥取県)

 西日本新聞の連載「松本清張がゆく 西日本の旅路」第11回(2024年12月22日)は、鳥取県の矢戸を舞台にした「父系の指」を取り上げました。担当デスクが付けた表題は「愛憎半ばする父の故郷」です。「父系の指」は1955年に文芸誌「新潮」に掲載された2作目の小説(1作目は時代小説の「特技」)です。大手出版社の文芸誌では「文學界」よりも「新潮」の掲載が早く、「三田文学」「別冊文藝春秋」「小説公園」に寄稿した作品も「私小説」とは言い難いので、本作が松本清張にとって「最初の私小説」になると私は考えています。鳥取県の矢戸で生まれた父親の人生を通して、清張自身の「生い立ちの謎」を記した秀作です。
 
 松本清張と「父系」の親族の関係や、清張作品における「私小説」の位置付けについては、慎重な解釈が必要で、いくつかの「私小説」の記載と、清張の長男・陽一の「父を語る(4)」を参考にしつつ、藤井康栄さんや清張記念館の学芸員の方とお話した内容も踏まえて、新しい解釈を記しています。なお本連載は、新聞連載ということもあり、出典の記載は最小限に留めていますが、毎回の引用・参照箇所は担当記者と共有し、校正にかけており、『松本清張はよみがえる』と同様に、書籍にする際に明記します。「松本清張研究」でほとんど参照されて来なかった資料も、相応に使用しています。

 今年の連載はこれが最後で、次回は2025年1月26日の朝刊に掲載予定です。思えば、18歳から原稿料をもらって文章を書いてきたので、そろそろもの書きとして30年の節目を迎えます。最初は、筆記試験で受かった某教育系出版社の小論文の解答例の執筆でした。就職氷河期や、人口の多い団塊ジュニア世代との競争を、大学院に通い、文筆と塾講師・家庭教師で収入を確保しつつ、無難に乗り切れたのは有難かったです。大学教員の公募でも、メディア・ジャーナリズム研究の分野で、書籍や文筆の業績をご評価頂き、2010年の文教大学着任時は内定が3校(2校は辞退)、2020年の明治大学着任時も、3校から面接のお声がけを頂くことができました。先日亡くなられた猪口孝先生にも、若手の枠で一度面接を頂いたことがあり、君は論壇誌に書いているけど、政治学ではないよね(笑)と、和やかに詰められ、おっしゃる通りです、これから頑張ります(笑)と答えた記憶があります。

 今年は『松本清張はよみがえる』の売れ行きも上々で、新連載も清張作品について深掘りできて好評でした。福田和也先生が亡くなったことは非常に残念でしたが、批評の書き手としては充実した一年でした。年末に良いお仕事のご依頼を頂いたこともあり、来年も楽しく仕事に取り組みたいと思います。

2024/12/16

北海道新聞・西日本新聞 円城塔『コード・ブッダ』書評

 北海道新聞(2024年12月15日)に円城塔さんの『コード・ブッダ』の書評を寄稿しました。担当記者が付けたタイトルは「AIと信仰 禍々しい魅力」です。本作は、チャットボットを模した文体で、信仰の起源と未来を同時に問いながら、作品の全体が「機械仏教の教典」のようになっている点が良いと思いました。作品の外部性に着目した内容です。文芸誌連載の「純文学」らしい作品で、「現代的な信仰」をテーマとした小説が、個人的に好きなのだと思います。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1101102/


 直木賞の候補作が発表になり、過去の直木賞対談(西日本新聞)で高く評価した作家では、伊与原新さんと朝倉かすみさんの新作がノミネートされています。家族で長崎に帰省しながら、5作を読むのを楽しみにしています(娘が電車が好きなので、片道8時間、途中下車の旅)。

「松本清張がゆく 西日本の旅路」は年内はあと一回(第11回)の掲載で、松本清張記念館の「松本清張研究」にも25枚ほど寄稿しました。「ユリイカ」の総特集・福田和也は12月27日発売で、論考30枚、解題20枚、著作一覧15枚を寄稿しました。3080円の分厚さで、他の著者の原稿を読むのを楽しみにしています。(私は福田和也の「信仰」について書きました。「文學界」の追悼文から、もう一歩、際どいところに踏み込んだ内容です)

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3999

 書籍の企画が無事通り、半年ほどかけてゆっくりと取り組むのですが、年内に一章を書き切れるかどうか。今年の仕事のたな卸しをしながら、来年の仕事の見通しを付けたいところ。

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 西日本新聞朝刊(2025年1月11日)にも、北海道新聞に寄稿した円城塔さんの『コード・ブッダ』の書評が掲載されました。北海道新聞と西日本新聞の契約に基づく転載です。

2024/12/04

三田評論に福田和也先生の追悼文を寄稿しました

 三田評論(2024年12月号)に「平成を代表する批評家――福田和也先生を偲ぶ」という記事を寄稿しました。「追想」欄に、安西祐一郎先生、山内慶太先生の記事と共にご掲載を頂いています。福田和也先生の慶應SFCでの面影について綴った文章です。

 福田先生は保守の論客というイメージが強いですが、大学の授業では政治的な偏りを示すことはありませんでした。大学院生だった私が「はじめてのお使い」で「CD-ROM版 マルクス=エンゲルス全集」(当時34万円)を、代々木の日本共産党近くの書店に買いに行った時の思い出などを記しています。

 ご推薦を頂いた先生方、編集部の皆さま、福田和也研究会の活動にご助力を頂いた皆さまに、心より感謝申し上げます。

三田評論 明治31年から続く慶應義塾の機関誌

https://www.keio-up.co.jp/mita/