2018/04/15

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第三回 吉田修一「破片」

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」第三回では、吉田修一の初期の作品「破片」(第118回芥川賞候補作)について取り上げています。表題は「母をもとめさまよう兄弟」です。

現在、朝日新聞朝刊で「国宝」を連載中の売れっ子作家・吉田修一の原点と言える2作目の中編で、長崎の実家の酒屋を中心的な主題にした唯一の作品です。「小島」近辺と思しき階段と坂道を、汗と涙を流しながら酒屋の仕事で上り下りする描写や、思案橋・銅座界隈のスナックで問題を起こす描写があります。

長崎南高校近くの「星取」というマニアックな地名も登場します。車の入れない、長崎南高校からの帰宅道の墓場のこのアングルからの長崎港の写真も、マニアックかも知れません。このアングルの写真を撮って頂いたのは、私が最も好きな長崎の風景だからです。長崎港の対岸に見える稲佐の町が霞んでいるのも味わい深いです。

昨年の「文學界」掲載の「吉田修一論」でも記しましたが、初期の「文學界」時代の吉田修一の作品には質が高いものが多く、再評価が進むことを望んでいます。映画やドラマにしても面白い作品が多くあると思っています。「現代ブンガク風土記」では、来週まで長崎を舞台にした作品を取り上げる予定です。

西日本新聞の内門博デスクの記事で、本連載をご紹介頂きました。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/desk/article/408707/