西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第38回(2018年12月16日)は、多和田葉子の全米図書賞受賞作『献灯使』について論じています。表題は「皮肉たっぷりの『震災文学』」です。
スケールの大きな震災文学で、この小説は福島第一原発事故を念頭におきながら、土壌汚染と海洋汚染が進行した近未来の日本を描いています。日本は「前回の大地震」で「海底に深い割れ目」ができた状態にあり、政府は民営化されていて、インターネットは遮断され、鎖国状態に置かれています。
作品の主な舞台は多和田葉子が育った東京西部の多摩地区で、東京23区が「長く住んでいると複合的な危険にさらされる地区」に指定された影響から、仮設住宅が建ち並んでいます。子供たちは、総じて健康状態が悪く、老人たちはなぜか長生きするようになり、70代の後半の老人ですら「若い老人」と呼ばれ、肉体労働に従事して社会を支えています。主人公は107歳の老人です。
描写の一つ一つに、高齢化していく現代日本に対する風刺と皮肉が込められていて、実験的で面白い作品です。多和田葉子らしい喜劇と悲劇が入り交じった、震災文学の傑作だと思います。
スケールの大きな震災文学で、この小説は福島第一原発事故を念頭におきながら、土壌汚染と海洋汚染が進行した近未来の日本を描いています。日本は「前回の大地震」で「海底に深い割れ目」ができた状態にあり、政府は民営化されていて、インターネットは遮断され、鎖国状態に置かれています。
作品の主な舞台は多和田葉子が育った東京西部の多摩地区で、東京23区が「長く住んでいると複合的な危険にさらされる地区」に指定された影響から、仮設住宅が建ち並んでいます。子供たちは、総じて健康状態が悪く、老人たちはなぜか長生きするようになり、70代の後半の老人ですら「若い老人」と呼ばれ、肉体労働に従事して社会を支えています。主人公は107歳の老人です。
描写の一つ一つに、高齢化していく現代日本に対する風刺と皮肉が込められていて、実験的で面白い作品です。多和田葉子らしい喜劇と悲劇が入り交じった、震災文学の傑作だと思います。