2020/01/14

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第91回 川上弘美『真鶴』

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第91回 2020年1月12日)は、神奈川県足柄郡の真鶴を舞台にした川上弘美の代表作『真鶴』を取り上げています。表題は「際どい恋愛 観光地の闇へ」です。

足かけ3年目を迎えた「現代ブンガク風土記」も100回までもう少し。本年もよろしくお願いいたします。

文芸評論家の坪内祐三さんの訃報に、愕然としました。心よりお悔やみ申し上げます。
昨年末に出版社のパーティーで元気そうなご様子に接したばかりでした。駆け出しの頃、私の文章を読んで下さって「頑張ってるね」「立派にやってるね」と優しく声をかけて頂き、何度も救われた思いがしました。

坪内さんは、明治の文学に詳しいだけではなく、同時代の論壇誌や文芸誌の書き手の論点に詳しい方でした。もの書きにとって厳しい時代ですが、文芸誌「en-taxi」にお世話になった人間として、坪内さんたち「大人の批評家」から学んだ、広い射程をもった「批評」と「散文」を、書ける限り書いていきたいと思います。


川上弘美『真鶴』あらすじ
夫の礼を失踪で失った文筆業の京のその後の日常を描いた作品。幻想的な内容の小説ながら、失踪の直前に夫のジャケットのポケットから出てきた「21:00」というメモや、日記に記された「真鶴」という文字の謎など、細かな仕掛けが読者の関心を誘う。真鶴を舞台に展開される夫の失踪の真相とは。2007年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。