2020/01/22

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第92回 阿部和重『シンセミア』

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第92回 2020年1月19日)は、山形県東根市神町を舞台にした阿部和重の代表作『シンセミア』を取り上げています。表題は「戦後日本が抱えた「悪の種」」です。「敗戦後の日本そのものを描くという狙いが3部作の根幹にはある」と著者がインタビューで述べていますが、この作品は阿部和重の実家をモデルにしたと思しき「パンの田宮」を中心とした「基地の町」の戦後史を描いた作品でもあります。

文芸評論家の坪内祐三氏の追悼文を、西日本新聞に寄稿しました。4枚ほどの原稿が、2月に入ってから掲載されると思います。対談を見学させて頂いたときの思い出や、20代の頃に原稿の内容に触れて、励まして下さったときのことを思い出しながら、感謝の気持ちを込めて書きました。

阿部和重『シンセミア』あらすじ
著者が生まれ育った山形県東根市神町を舞台に、パン屋の田宮家とヤクザの麻生家を中心とした戦後史が、多様な登場人物たちのエピソードと共に紐解かれる。ひと夏に起きた奇妙な事件の数々と、偶然に起きた台風による洪水が、町を分断する抗争を引き起こし、神町の人々が忘却していた血生臭い歴史を露わにしていく。毎日出版文化賞と伊藤整文学賞の受賞作。