祝・連載130回! 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第130回 2020年10月18日)は、東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を取り上げています。表題は「時代、国境超えた若者の悩み」です。
昔ながらの住宅街にある「昭和の雑貨店」を舞台にした作品です。東日本大震災の直後から連載され、世界での累計発行部数が1千万部を超えるベストセラーとなりました。現代日本の小説で最も読まれた作品の一つと言えます。中国語版の映画も製作され、日本語版で西田敏行が演じたナミヤ雑貨店の店主は、ジャッキー・チェンが演じています。映画版は大分県の豊後高田市を中心に撮影が行われ、観光地として知られる「昭和の町」や真玉海岸などで撮影が行われています。
昭和の時代から変わらないものと、大きく変わったものが、手紙のやり取りを通して浮き彫りにされる展開が面白い作品です。時代が変わっても多くの若者たちが、人生に迷い、自らの情熱を傾けるべき仕事や、愛情を傾けるべき相手のことで悩み、誰かに話を聞いてもらいたがっていることに変わりないのだと思います。
東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』あらすじ
住宅街の外れにある「ナミヤ雑貨店」は、無料で悩み相談を引き受けている。72歳の店主・浪矢雄治さんは一つ一つの悩みに誠実に答えることで、相談者たちから信頼を得ていく。なぜ彼はこのようなボランティア活動をはじめたのか。様々な相談者たちの謎めいた人生と共にナミヤさんの生い立ちがひも解かれていく。