2022/12/01

「没後30年 松本清張はよみがえる」第26回『陸行水行 別冊黒い画集2』

 西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第26回(2022年12月1日)は、『陸行水行 別冊黒い画集2』について論じています。担当デスクが付けた表題は「邪馬台国論争あおる ロマンと推理の結晶」です。毎回、9×9文字で担当デスクに上手いタイトルを付けて頂いています。特に「ロマンと推理の結晶」という見出しが考古学らしくて秀逸で、初稿ゲラを見て唸りました。古墳時代の王子の反乱を描いた『隼別皇子の反乱』などで知られる田辺聖子とのmatch-upです。

 東京の某大学の歴史科の講師・川田修一の視点から、邪馬台国の「九州説」に魅せられた人々の数奇な運命を描いた表題作を含む中短編集です。「陸行水行」というタイトルは、「魏志倭人伝」に記された距離の単位で、陸路の旅が陸行、海路の旅が水行という意味です。このような距離と移動手段の大雑把な表現が、邪馬台国の「畿内説(大和説)」と「九州説」の対立を生むことになりました。

「陸行水行」は松本清張が「邪馬台国のミステリ」と正面から向き合った最初の作品です。「古代史疑」(1968年)など一連の「邪馬台国もの」を通して、清張は「九州説」を唱え、「邪馬台国ブーム」の火付け役となりました。1986年から佐賀県で吉野ケ里遺跡が本格的に発掘されことも手伝って、晩年の松本清張は「九州説」を体現する象徴的な存在となりました。

 邪馬台国は佐賀でいいんじゃないかと、今でも吉野ケ里を訪れた九州北部の人は思っていると思います。纒向遺跡のある奈良県桜井(保田與重郎の故郷)も「古代史のロマン」を感じさせる、味わいのある土地ですが、個人的には、桜井を邪馬台国と見なすには「魏志倭人伝」の誇張された距離の記載と比べても、遠すぎるように思えます。

https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/1022048/

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 年末なので仕事は溜まるばかりですが、何とかリトル・バイ・リトルで片付けています。ワールドカップについては、6年もサッカーをやっていたわりに、マラドーナとかジーコとか昔の選手しか知らず、学生にはヨーロッパの都市対抗のUEFA Champions Leagueの現地観戦を勧めています。クラブチームはナポリでマラドーナが英雄になったり、ドルトムントで香川が活躍するなど国際的なので、国別対抗戦より、コミュニティの形成に関わる深みがあります。たまにマニアックなサッカーファンに二度見されますが、私の息子が愛用している服は、スペイン・アンダルシア州のカディスCFのユニフォームで、学生には旅行して好きになった街のチームを応援することを勧めています。

 とはいえ12月の楽しみはサッカーではなく、NFLの終盤戦とアメリカの大学生たちのBowl Gamesです。2016年の大統領選挙の時に車でめぐり思い出深いラストベルトのチーム(オハイオ州立大など)やLSUやジョージアなど南部のチームをダイジェストでチェックしています。NFLは、NYの弱い方のチームを応援して30年ぐらい経つのですが、今年は20年ぶりぐらいに期待が高く、one of the biggest surprise in the leagueとか言われているので、月曜の朝からこちらの調子がくるっています。

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 宮台真司先生のご回復を心よりお祈り申し上げます。メディアで目立っている人間を狙い撃ちする、という行為が昔から絶えず、非常に残念に思います。退院されて快活にお話をされる姿を拝見するのを楽しみにしております。