西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第29回(2018年10月14日)は、伊坂幸太郎の『重力ピエロ』について論じています。表題は「重い主題 仙台で軽やかに」です。
伊坂幸太郎は千葉県の出身ですが、東北大学に入学してから仙台に居住し続け、繁華街の喫茶店で執筆するなど、生活世界を作品世界に重ね合わせることで、本格派のミステリー作家として大成しています。2003年の『重力ピエロ』から2008年の『ゴールデンスランバー』にかけて、伊坂は仙台を舞台として「失われた20年」を生きる若者たちの現実感を捉えることで、軽やかでありながら、地に足の着いた作品世界を確立することに成功しています。
この作品は、遺伝子を解析する会社で働く「私」が、仙台の市街地で連続放火事件が起き、その現場の近くに、グラフィティアートと遺伝子の配列を示唆するメッセージが残されていることに気付き、事件の背後に見え隠れする弟のことを心配するところからはじまります。『重力ピエロ』という風変わりな表題は「ピエロが空中ブランコから跳ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」という弟の言葉に由来するもので、弟と「私」の細やかな感情を介した兄弟関係の描写が、この小説の読み所となります。
「重力ピエロ」は、新時代のミステリー作家らしい才気に溢れた作品で、軽やかでありながら、重厚なテーマ性を有する現代日本を代表するミステリー小説だと思います。
伊坂幸太郎は千葉県の出身ですが、東北大学に入学してから仙台に居住し続け、繁華街の喫茶店で執筆するなど、生活世界を作品世界に重ね合わせることで、本格派のミステリー作家として大成しています。2003年の『重力ピエロ』から2008年の『ゴールデンスランバー』にかけて、伊坂は仙台を舞台として「失われた20年」を生きる若者たちの現実感を捉えることで、軽やかでありながら、地に足の着いた作品世界を確立することに成功しています。
この作品は、遺伝子を解析する会社で働く「私」が、仙台の市街地で連続放火事件が起き、その現場の近くに、グラフィティアートと遺伝子の配列を示唆するメッセージが残されていることに気付き、事件の背後に見え隠れする弟のことを心配するところからはじまります。『重力ピエロ』という風変わりな表題は「ピエロが空中ブランコから跳ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」という弟の言葉に由来するもので、弟と「私」の細やかな感情を介した兄弟関係の描写が、この小説の読み所となります。
「重力ピエロ」は、新時代のミステリー作家らしい才気に溢れた作品で、軽やかでありながら、重厚なテーマ性を有する現代日本を代表するミステリー小説だと思います。