西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第27回(2018年9月30日)は、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』について論じています。表題は「都市にぼんやり拡がる欲望」です。
この作品は、著名な作家が記した、名古屋を舞台にした数少ない現代小説の一つです。一見すると、多崎つくるの人生を紐解く、シンプルな話ですが、名古屋を離れた多崎つくるが、自己の無意識に巣くっている「故郷喪失」の謎を解明していく精神分析=青春分析書とでも言うべき、深みのある内容です。
村上春樹の他の青春小説と同様に、エロス=生の欲望と、タナトス=死の欲望の双方が、無意識レベルで横溢しているのも特徴です。これらの欲望が、名古屋の都市空間のように「のっぺりとした場所」に、靄のように人びとの視界を遮りながら、ぼんやりと拡がっているのが面白いです。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、村上春樹の作品の中では注目度こそ低いですが、名古屋に限らず、現代日本の中核都市に住む人々の現実感を捉えた、興味深い作品だと思います。
この作品は、著名な作家が記した、名古屋を舞台にした数少ない現代小説の一つです。一見すると、多崎つくるの人生を紐解く、シンプルな話ですが、名古屋を離れた多崎つくるが、自己の無意識に巣くっている「故郷喪失」の謎を解明していく精神分析=青春分析書とでも言うべき、深みのある内容です。
村上春樹の他の青春小説と同様に、エロス=生の欲望と、タナトス=死の欲望の双方が、無意識レベルで横溢しているのも特徴です。これらの欲望が、名古屋の都市空間のように「のっぺりとした場所」に、靄のように人びとの視界を遮りながら、ぼんやりと拡がっているのが面白いです。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、村上春樹の作品の中では注目度こそ低いですが、名古屋に限らず、現代日本の中核都市に住む人々の現実感を捉えた、興味深い作品だと思います。