西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第21回(2018年8月19日)は、絲山秋子の『逃亡くそたわけ』について論じています。表題は「博多の訛りと『化学反応』」です。
絲山秋子は世田谷区出身で、東京で教育を受けていますが、地方を舞台にした質の高い作品を多く記してきた作家です。この小説は、躁鬱病を患った経験のある著者らしい作品で、自殺未遂から精神病院に入れられた大学生の「花ちゃん」が、名古屋出身ながら、東京にアイデンティティを持つ「なごやん」と福岡の精神病院を脱走する話です。「いきなり団子」を美味しそうに食べる姿が印象に残ります。
博多から国後半島、阿蘇、宮崎を経て、鹿児島の開聞岳まで、九州の裏観光地とでも言える場所を転々としながら、各土地の名物や方言の魅力を巧みに引き出しています。
構成も練られたもので、外的には、自己と社会との関係を閉ざす精神病院からの逃亡劇が、内的には、自己の欲望を抑制する超自我からの逃亡劇が巧みに展開されています。
福岡など九州北部の訛りを帯びた言葉や感情の描写が魅力的で、長崎出身の私からも見ても地に足のついたリアリティを感じる作品ですので、ぜひご一読下さい。
絲山秋子は世田谷区出身で、東京で教育を受けていますが、地方を舞台にした質の高い作品を多く記してきた作家です。この小説は、躁鬱病を患った経験のある著者らしい作品で、自殺未遂から精神病院に入れられた大学生の「花ちゃん」が、名古屋出身ながら、東京にアイデンティティを持つ「なごやん」と福岡の精神病院を脱走する話です。「いきなり団子」を美味しそうに食べる姿が印象に残ります。
博多から国後半島、阿蘇、宮崎を経て、鹿児島の開聞岳まで、九州の裏観光地とでも言える場所を転々としながら、各土地の名物や方言の魅力を巧みに引き出しています。
構成も練られたもので、外的には、自己と社会との関係を閉ざす精神病院からの逃亡劇が、内的には、自己の欲望を抑制する超自我からの逃亡劇が巧みに展開されています。
福岡など九州北部の訛りを帯びた言葉や感情の描写が魅力的で、長崎出身の私からも見ても地に足のついたリアリティを感じる作品ですので、ぜひご一読下さい。