2020/06/16

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第112回 矢作俊彦『神様のピンチヒッター』

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第112回 2020年6月14日)は、矢作俊彦の最初期の短編集『神様のピンチヒッター』を取り上げています。表題は「大人の会話挟み『横浜』描く」です。現在も「ハードボイルド」な雰囲気が感じられる山下公園の写真を掲載頂きました。

米軍の影と、日本の政治家の陰謀、ヤクザの利権争いなど、日本の東西を代表する港町を舞台にしたハードボイルドな物語が、重層的な時間描写の中で展開されています。「崎陽軒の焼売弁当ならまだしも、牛の顔だか猫の尻尾だか判らない肉をデトロイト製の工作機械で成形したハンバーガァなんかで我慢する必要はさらさないんだ」といった一見するとユーモラスな台詞の中に、横浜の土地に根差した著者らしい、戦後日本に対する感情が垣間見えます。

表題作「神様のピンチヒッター」は、矢作俊彦の監督・脚本、江口洋介の主演で映画されています。DVD化されていない作品ですが、横浜スタジアム近辺の旧市街の雰囲気が、小説の世界とシームレスに溶け込んでいて味わいがあります。

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矢作俊彦『神様のピンチヒッター』あらすじ
横浜と神戸を舞台にして、殺し屋の翎と華僑の娘・由子を中心に、複雑な利害が入り組む事件を描いた短編集。生粋の横浜っ子である著者の最初期の作品を収録。日活のギャング映画ようようでありながら、ハードボイルド小説らしく、政治とヤクザと警察が織りなす複雑な秩序を炙り出す。