西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第124回 2020年9月6日)は、高山羽根子の芥川賞受賞作『首里の馬』を取り上げています。表題は「港川の記憶 前衛的な寓話」です。琉球王国の古都である沖縄県浦添市港川を舞台にした作品です。
今週の月~水は、青山学院大学社会情報学部の集中講義「ジャーナリズム」5コマ×3日=15コマを担当しました。熱心な学生が多く、質疑も活発で充実した授業時間を過ごすことができました。秋学期は明治大学国際日本学部の英語の授業を中心に、立教大学社会学部でゼミと卒論を担当します。
『首里の馬』の舞台となる浦添市港川は那覇市の北側に位置する沖縄第4の市で、琉球王朝の発祥の地として知られます。12世紀から14世紀の間は浦添城を中心として琉球王国の首都として栄えました。ただこの小説によると「この地域には、先祖代々、ずうっと長いこと絶えることなく続いている家というものがほぼなかった」といいます。
浦添は琉球処分の際に区画が引かれなおされ、太平洋戦争の時には首里の前哨地として激戦が続きました。小説でも説明されている通り、苛烈な戦闘の影響でこの地域の死傷者数は公的に「不明」とされています。戦後は米国の占領下に置かれ、現在、その外国人住宅の一部は「港川外人住宅」や「港川ステイツサイドタウン」と呼ばれ観光地として人気を集めています。「首里の馬」は、琉球王朝の発祥の地であり、この島の近代史の暗部が色濃く反映された土地を舞台にした作品です。
高山羽根子『首里の馬』あらすじ
沖縄で生まれ育った未名子は、海外の遠隔地にいる人と指定された時間に、オンライン通話で「クイズを読み、答えさせる」妙な仕事に就いている。その傍らで彼女は「沖縄及島嶼資料館」の資料整理をボランティアで手伝っている。台風の日に、宮古馬が自宅の庭にやってきたことをきっかけに、未名子の人生は大きく変容していく。