産経新聞朝刊(2023年10月29日)に福田和也著『放蕩の果て 自叙伝的批評集』(草思社)の書評を寄稿しました。表題は「俗情の底で輝く『生』」です。3度救急搬送されながら、『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』(河出書房新社)を書き上げ、この本が注目を集めた直後に、400頁を越える「自伝的批評書」を出してみせる、福田和也先生の「プロの批評家らしい矜持」へ敬意を込めました。10日ほど前に書いた原稿ですが、それ以前から書いていたような思いがします。
この本は2010年代後半の「新潮」掲載の批評文を中心に据えた、良書です。すべて初出時に読んでいましたが、改めて読み直し、福田先生の文章を毎月、毎週、雑誌で読んでいた院生~若手教員時代を思い出しました。福田先生の本について論じるのは、「文芸批評」の方法論上、工夫を要するので骨が折れますが、毎回、これで最後という気持ちで書いています。
福田和也著『放蕩の果て 自叙伝的批評集』書評/産経新聞
https://www.sankei.com/article/20231029-GVOYPZDBAVK3XBTHLU63ICG56M/
前作と前々作の書評
福田和也著『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書評/「日常を文化とする心」
https://www.sankei.com/article/20230604-UB3SVSVSOFPZXM6ERJOD36HZUU/
『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』書評/「奇妙な廃墟に聳える邪宗門」
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/945463/
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ゲンロンの司馬遼太郎鼎談のダイジェスト版の映像を作成いただきました。下のリンクで観れます。教養豊かなお二方と踏み込んだお話しができて、楽しい会でした。
福間良明×酒井信×與那覇潤「司馬遼太郎はいかに国民作家になったのか──生誕100年で考える戦後日本の歴史観」(2023/8/30収録)ダイジェスト
https://www.youtube.com/watch?v=T2xym5JQdQs
改めて映像を観ると、與那覇さんからもご関心を頂いた橋川文三の『日本浪漫派批判序説』に言及したあたりで、都市から「郷土」を想像した日本浪漫派と、その対比から農本主義を再評価した橋川の思想を手掛かりに、司馬遼太郎の『街道をゆく』を分析すると、自分なりの司馬論が展開できそうな感じがしました。先々、司馬についても書いてみたいと思います。
書籍版の『松本清張はよみがえる』(西日本新聞社、2024年初頭に刊行予定)は、現在、レイアウトが決まり、校正の作業が進行しているところです。