2018/06/03

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第10回 角田光代『空中庭園』

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第10回(2018年6月3日)は、角田光代の『空中庭園』について論じています。表題は「『効率的な現代家族』先取り」です。

この小説は、多摩ニュータウンを想起させる東京郊外を舞台とした作品で、デフレと円高のお陰で建築資材が安価になり、公共投資が推進された平成期に浸透した、人工的な住空間=空中庭園に住む家族の姿を描いています。ショッピング・モールを中心とした住環境が全国に拡がり、家族と一緒に居ながらも、スマートフォンを通して別の人とコミュニケーションをとることが出来る、現代的な現実感を先取った作品といえると思います。
様々な嘘や隠し事を黙認した上で、「家族」と一緒に居た方が、効率的かつ快適に生きることができる、という内面の描写は、現代文学らしい表現だと思います。

この連載では、私が撮影した写真も多く掲載を頂いています。今回は映画版の「空中庭園」(豊田利晃監督)の舞台になったセンター北の駅前の写真を採用頂きました。

今回で「現代ブンガク風土記」は10回の節目を迎え、九州から北海道、東京郊外を舞台にした作品を取り上げてきました。
まだまだ「地方」を舞台にした多くの優れた現代小説は多く発表されていますので、拙文にご関心を頂ければ幸いです。