2018/09/02

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第23回 有川浩「阪急電車」

西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第23回(2018年9月2日)は、有川浩の「阪急電車」について論じています。表題は「今津線あふれる臨場感」です。

有川浩はベストセラーとなった「図書館戦争」に代表される、SF作品やミリタリー小説を書く作家というイメージが強いと思います。ただ「阪急電車」は、電車に乗り合わせた人びとが、車内での細やかな感情のやり取りを通して、物語がドミノ倒しのように展開される良く出来た群像劇で、登場人物たちの内面描写に読み応えがあります。

阪急今津線は短いながらも、宝塚や関西学院大学、阪神競馬場や西宮など、個性的な土地を沿線に擁しており、登場人物たちの性格にも、それぞれの土地が持つ「風土」が影響を及ぼしているように読めて、面白い作品です。有川浩は「阪急電車」の進行に合わせて、乗客たちのエピソードを次々と披露しながら、巧みに小説を展開しています。