「明かりをつけたそれと、消えているそれとがあれほどまでに違う建物を、俺は見たことがない」という一節に象徴されるように、大阪の町に住む登場人物たちの青春の明暗を描いた作品です。
家族を持つことや結婚をすること、仕事にやりがいを見出すことなど、普遍的な生活者としての人間の悩みが、西加奈子らしいユーモラスな文章を通して表現されています。
登場人物たちの暗雲が立ち込める日常を、矜持やこだわりを持って大阪の街を生きる人々の中で浮き彫りにする内容で、大阪育ちの作者らしいユーモラスな文体が生きています。
西加奈子『通天閣』あらすじ観光地・大阪ミナミを生きる訳ありの人々の生活を、奇妙な縁を持つ「俺」と「私」の二人の視点から描いた作品。「こんな私を、誰か愛してくれるのだろうか」といった切実な悩みが綴られる。大阪の街の暗部を、西加奈子らしい現代的な筆致でユーモラスに描いた作品。第24回織田作之助賞を受賞。