2022/09/20

「没後30年 松本清張はよみがえる」第8回『昭和史発掘 芥川龍之介の死』

  西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第8回(2022年9月20日)は、『昭和史発掘』より「芥川龍之介の死」について論じています。『昭和史発掘』からは2作を取り上げます。文学からは「潤一郎と春夫」も検討しましたが、清張は若い頃に芥川を愛読しているので「芥川龍之介の死」にしました。担当デスクが付けた表題は「不況時代の経験投影 共感を込めた作家論」です。『ぼんち』などの船場を舞台にした作品を記した山崎豊子とのmatch-upです。

 この作品で清張は、芥川を「俗情」をさらすことで大成した谷崎と対照的な存在として描いています。「俗情」を何よりも重んじる清張は、芥川が抱えていた「女の問題」を、神経衰弱や胃病、痔疾や不眠症などの病状と共に、自殺に至る大きな理由だったと考えました。

 芥川の死について、文学や芸術上の問題ではなく、世俗的な問題に重きを置いて論じている点が松本清張らしいです。本作で描かれる晩年の芥川は、執拗に追い縋って来る「H女=河童」に迷惑を感じ、「才力の上でも格闘出来る女=片山広子」と恋に落ち、「M女」と帝国ホテルで情死する約束をするような生活を送っていました。「芥川はH女に苦しめられたが、彼は、そのことをどうして親友にうち明けて相談しなかったであろうか」という清張の問いは、芥川の死について考える上で本質的なものだと思います。

 本文では触れませんでしたが、芥川の晩年の名作『河童』はこの時の経験が生かされたポスト・モダン風の作品で、松本清張は芥川に長生く生き、こういう軽妙な文体で、谷崎のような長編を書いてほしかったのだと思います。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/990171/

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 NFLのWeek2は、Thursday Night Footballがprime videoでスタート。LA CargersとKC Chiefs@Arrowhead Stadiumという絶好のカードで、Amazon CEOのJeff Bezosも観戦してました。解説は2022年6月に引退したばかりのハーバード出身のRyan Fitzpatrick! 日本の教育システムからは出ないタイプの奇才で、ドラフト7巡250位ながら、IQの高さとGutsy Effortで8チーム・17年NFLで生き残ったJourneymanです。NFLはIT企業をメディア・コンテンツ制作に引き入れて、フットボールの魅力を高めることに成功しています。スーパーで時給5ドルでバイトしながらプロになったKart Warnarとの論戦が楽しみ。
 下のFitzpatrickのドキュメンタリーによると、奥さんはHarvardでオールアメリカの女子サッカー選手だったとか。7人の子供にBradyとか、敵チームのQBの名前を付けていて、Fitzは面白い。Week 2にupsetを演出したJETSのJoe Flaccoも37歳で子供5人。ベビーシッターを雇って働くより他ないですね。