2022/09/01

「没後30年 松本清張はよみがえる」第4回『西郷札』

  西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第4回(2022年9月1日)は、清張のデビュー作『西郷札』について論じています。担当デスクが付けた表題は「維新後の庶民の変化 軍票通じ描く出世作」です。佐世保と思しき街を舞台に「偽札」をめぐるミステリを展開した、佐藤正午さんの傑作『鳩の撃退法』とのmatch-upです。

 短編小説「西郷札」は松本清張が1951年に発表した処女作です。清張は18歳頃に小倉で文学好きな友達と小説を書き、輪読していましたが、小説を書いていてはでは生活できないと考え、本作を記すまで小説の執筆を止めていました。しかし戦後のインフレの中で、一家8人の生活費を捻出する必要に迫られ、彼は「生活」のため「週刊朝日」の「百万人の小説」に応募します。戦前は生活のために筆を折った清張が、戦後は生活のために筆を執ったというのが興味深く、「一世一代の名短編」と言えます。

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