西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第36回(2023年2月15日)は、松本清張が川端康成の名作を念頭に置き、スリリングな推理小説に仕上げた初期の名短編「天城越え」について論じています。担当デスクが付けた表題は「ブラック清張の名作 川端の代表作に対抗」です。毎回、9×9文字で担当デスクに上手いタイトルを付けて頂いています。『海炭市叙景』や『そこのみにて光輝く』などの作品で、地方に住む若者たちの「青春の影」を描いた佐藤泰志とのmatch-upです。
天城越えとは、伊豆半島の中央を南北に縦断する「下田街道」を通り、三島と下田の間にある難所「天城峠」を越える旅路です。伊豆が温泉地であることから、そこには甘美な旅情が宿ります。1904年に日本初の石造道路トンネル「天城山隧道(ずいどう)」が開通し、1927年刊行の川端康成の「伊豆の踊子」で取り上げられ、知名度を高めました。川端の「伊豆の踊子」は伊豆旅行を象徴する作品として繰り返し映画化され、松本清張の「天城越え」は1983年に渡瀬恒彦、田中裕子、樹木希林の出演で映画化されています。
「伊豆の踊子」の「私」が下田街道の途中で旅芸人一座の踊子に惹かれたように、本作の「私」も派手な着物をまとう娼婦に惹かれ、心細い道行きを共にします。川端が子供のように純真な少女を描いたのに対して、清張が粗暴さで知られる若い女を描いている点に、社会の下層を生きる人々を知る清張らしさが垣間見えます。
川端康成の「伊豆の踊子」の瑞々しさとは正反対のどろどろした読後感に「ブラック清張」らしさを感じる作品です。踊り子の少女に純粋さを見出す川端の筆致とは異なって、世間ずれした女に、過去に目撃した「母親の不貞」を見出している点が、本作の「暗い魅力」と言えると思います。川端は私も好きな作家で、後期の『山の音』『みづうみ』『眠れる美女』あたりの、戦後日本の退廃と「魔界」を接続している凄みのある作品が好みです。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1054159/
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Super Bowl LVII、素晴らしい試合でした。怪我した足に容赦のないタックルを食らい、片足を引き摺っていたMahomes君が、35-35で迎えた4Q残り2分から、30ヤード走って試合を決めるという(LBもDBも完全に予想外という感じ)、実にエモーショナルな試合でした。敗れたHurts君も素晴らしく、オープニングのChris Stapleton(グラミー賞8回、苦労人)のNational Anthemが良すぎて、Eagles HCのNick Sirianniが早々に泣いてしまった点に、敗因があったと思います。Hurts君のような超優良QBが育つと、HCの年俸として20億円×10年=200億円ぐらいは保証されるので、涙する気持ちは良く分かりますが、まさか試合前に泣くとは。
Chris Stapleton Sings the National Anthem at Super Bowl LVII
https://www.youtube.com/watch?v=WFKXJ091Ed4
NFL Super Bowl LVII Mic'd Up, "we have to put up 7"