2023/05/16

「没後30年 松本清張はよみがえる」第49回『ペルセポリスから飛鳥へ』

  西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第49回(2023年5月16日)は、『ペルセポリスから飛鳥へ』について論じています。担当デスクが付けた表題は「古代文化の源流探る 清張史観の『総決算』」です。毎回、9×9文字で担当デスクに上手いタイトルを付けて頂いています。日本の文明を東洋という枠組みを超えた多様なものとして、実地調査を基に考察した梅棹忠雄とのmatch-upです。

 1979年に刊行された「ペルセポリスから飛鳥へ」は、松本清張の古代史観の「総決算」と言える作品です。メソポタミア文明を継承するペルシャ帝国の文化と、日本の飛鳥文化や九州の古代遺跡の類似点に着目している点が大胆で、話題となりました。

 古墳時代の後期に建立された飛鳥寺の大仏は「日本最古の仏像」として知られますが、ユーラシア大陸に点在する大仏との類似点が指摘されています。また猿石や亀石など飛鳥に点在する石造物も、仏教の影響下で作られたものとは意匠が大きく異なります。

「中国の絹だけに限定されるイメージをもつシルクロードの名は早急に改めるべきであろう」と述べている通り、ペルシャと飛鳥の間には「拝火教の道=火の路」や「青銅器の道」、「薬草の道」などがあったと清張は考えています。

 冒頭で記した通り、松本清張が古代史ブームを先導した功績を称えて、西九州新幹線の新駅に「邪馬台国」という名称を採用してはどうでしょう(近畿でも採用してもいいのではないでしょうか)。邪馬台国九州説の是非はさておき、新鳥栖ー邪馬台国ー武雄温泉の旅は、非常に魅力的です。

 5月28日(日)に福岡市の天神スカイホールで「没後30年 松本清張はよみがえる」に関連したイベントを開催します。詳細は下の記事か「西日本新聞 文化班 Twitter」でご確認頂ければ幸いです。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1088605/


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 来月の書評の下準備で、久しぶりに福田恆存を読み返しているのですが、松本清張と歳が近いので、清張作品について考える上でも「時代の肌感覚」として参考になる批評文が多いです。「他者を否定しなければなりたたぬ自己とふようなものをぼくははじめから信じてゐない。ぼくたちの苦しまねばならぬのは自己を自己そのものとして存在せしめることでなければならぬ。この苦闘に思想が参与する」(「一匹と九十九匹と」)など。戦中派より年上の批評家らしい「醒めた人間観」が良いです。