「問題複合体を対象とするデジタルアース共同利用・共同研究拠点 成果報告会」(文部科学省共同利用・共同研究拠点、中部大学国際GISセンター)で研究発表を行ってきました。私にとっては年に一度の定量的なメディア研究の発表で、前任先の慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所時代から続けている研究内容です。例年のことながら「理系」の先生方に囲まれて共同研究を行うことは、緊張感があり、今年は特に好評を頂けて大変励みになりました。
(例年この発表が終わると春休み、という感じなのですが、今年は現代ブンガク風土記の連載と、5月発売予定の本の分担執筆の原稿に追われていて、春休みは遠そうです。。)
今年度は2011年3月から2018年8月までの東日本大震災及び福島第一原発事故に関する「風評被害」報道について、報道量・報道内容の分析を行い、記事内で言及されている地名について3階層(都道府県、市町村、町名)に区分したメタデータを抽出し、デジタルアース上に配置することで報道分布の分析を行いました。
研究結果としては、第一に「風評被害」に関する報道量は、一括りに「被災地」と呼ばれる場所の中で格差が生じる傾向にあり、「風評被害」報道は福島県及び宮城県に集中しながらも、広汎な地域に分散していることが分かりました。
また「風評被害」の報道においては、米、果物、桃、キュウリ、ほうれん草をはじめとした農作物に対する報道量が突出して多く、報道の多くが福島県に集中しています。他にも漁業や観光業、畜産業に関する「風評被害」の報道量も多く、特に品目別で米を上回り、魚に関する「風評被害」が多く報道されている点は、福島第一原発の汚染水の海への流出が、多くの人々に危惧されていたことを物語っています。
報道内容の傾向については、震災・原発事故直後の2011年度は、ネガティブな報道が全体の約85%を占めていました。これに対して2015年から2018年にかけては、「風評被害」の報道そのものが少なくなり、ネガティブな報道は約60%にまで低下しています。
全期間を通して読売新聞の方が朝日新聞よりもポジティブな報道を行う傾向にあり、前者のネガ・ポジ比が65:35であるのに対して、後者は87:13でした。この比率には、政府に相対的に近い立場から原子力発電の普及を後押ししてきた読売新聞と、反対してきた朝日新聞の報道傾向の差が反映されていると考えられます。
今後も東日本大震災及び福島第一原発事故に関する「風評被害」については、研究を重ねていく予定です。
(例年この発表が終わると春休み、という感じなのですが、今年は現代ブンガク風土記の連載と、5月発売予定の本の分担執筆の原稿に追われていて、春休みは遠そうです。。)
今年度は2011年3月から2018年8月までの東日本大震災及び福島第一原発事故に関する「風評被害」報道について、報道量・報道内容の分析を行い、記事内で言及されている地名について3階層(都道府県、市町村、町名)に区分したメタデータを抽出し、デジタルアース上に配置することで報道分布の分析を行いました。
研究結果としては、第一に「風評被害」に関する報道量は、一括りに「被災地」と呼ばれる場所の中で格差が生じる傾向にあり、「風評被害」報道は福島県及び宮城県に集中しながらも、広汎な地域に分散していることが分かりました。
また「風評被害」の報道においては、米、果物、桃、キュウリ、ほうれん草をはじめとした農作物に対する報道量が突出して多く、報道の多くが福島県に集中しています。他にも漁業や観光業、畜産業に関する「風評被害」の報道量も多く、特に品目別で米を上回り、魚に関する「風評被害」が多く報道されている点は、福島第一原発の汚染水の海への流出が、多くの人々に危惧されていたことを物語っています。
報道内容の傾向については、震災・原発事故直後の2011年度は、ネガティブな報道が全体の約85%を占めていました。これに対して2015年から2018年にかけては、「風評被害」の報道そのものが少なくなり、ネガティブな報道は約60%にまで低下しています。
全期間を通して読売新聞の方が朝日新聞よりもポジティブな報道を行う傾向にあり、前者のネガ・ポジ比が65:35であるのに対して、後者は87:13でした。この比率には、政府に相対的に近い立場から原子力発電の普及を後押ししてきた読売新聞と、反対してきた朝日新聞の報道傾向の差が反映されていると考えられます。
今後も東日本大震災及び福島第一原発事故に関する「風評被害」については、研究を重ねていく予定です。