西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」は2年目に突入します! 連載開始から1年間で様々な場所を舞台にした現代小説52作品を取り上げてきました。引き続き、魅力的な小説を取り上げていきますので、よろしくお願いいたします。
年度末の「現代ブンガク風土記」(第52回 2019年3月31日)は、恩田陸の本屋大賞受賞作『夜のピクニック』について論じました。表題は「『通過儀礼』を青春小説へ」です。
「夜のピクニック」は恩田の母校、茨城県立水戸第一高校の「歩く会」をモチーフにした作品です。作中で描かれる「歩行祭」は、年に1回、全校生徒が朝の8時から翌朝の8時まで、80キロの道のりを歩く行事です。この作品は、通過儀礼としての「歩行祭」を通して、高校生たちが普段よりも素直になり「心の距離を近付ける姿」を描いた作品です。
「信頼している友人が、目に見える、ちょっと離れたところを歩いている。それだけで満足だった」と記されているように、登場人物たちの「歩行祭」の歩みは、それぞれの高校生活を象徴するものとなります。
「夜のピクニック」は、友情と恋愛の境目がゆるく、友人とも恋人とも言えるような高校生らしい人間関係の闇の深さを、登場人物たちの思春期の自意識を通して、浮き彫りにすることに成功しています。「みんなで夜歩く」というシンプルな「通過儀礼」を、前時代的な古臭さを削ぎ落とし、思春期の男女の「心の旅」として描いた著者の筆力が光る作品です。
年度末の「現代ブンガク風土記」(第52回 2019年3月31日)は、恩田陸の本屋大賞受賞作『夜のピクニック』について論じました。表題は「『通過儀礼』を青春小説へ」です。
「夜のピクニック」は恩田の母校、茨城県立水戸第一高校の「歩く会」をモチーフにした作品です。作中で描かれる「歩行祭」は、年に1回、全校生徒が朝の8時から翌朝の8時まで、80キロの道のりを歩く行事です。この作品は、通過儀礼としての「歩行祭」を通して、高校生たちが普段よりも素直になり「心の距離を近付ける姿」を描いた作品です。
「信頼している友人が、目に見える、ちょっと離れたところを歩いている。それだけで満足だった」と記されているように、登場人物たちの「歩行祭」の歩みは、それぞれの高校生活を象徴するものとなります。
「夜のピクニック」は、友情と恋愛の境目がゆるく、友人とも恋人とも言えるような高校生らしい人間関係の闇の深さを、登場人物たちの思春期の自意識を通して、浮き彫りにすることに成功しています。「みんなで夜歩く」というシンプルな「通過儀礼」を、前時代的な古臭さを削ぎ落とし、思春期の男女の「心の旅」として描いた著者の筆力が光る作品です。