西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」の第17回(2018年7月22日)は、江國香織の代表作『神様のボート』について論じています。表題は「母娘の関東周縁放浪記」です。
この作品について江國香織は、「いままでに私の書いたもののうち、いちばん危険な小説だと思っています」と述べています。この小説は母娘の成長を描いた作品ですが、内容は際どく、身内や友人と連絡を絶ち、関東の周縁とも言える町を一年に一回ほどのペースで「旅がらす」として渡り歩きながら、娘の父親の「あの人」を探して回る話です。
東京の周縁を巡りながら、昼間にピアノを教え、夜はバーで働きつつ、正気と狂気が混在した日常の中で、父親を探し、娘を育てる母親の姿に、地に足の着いたリアリティが感じられます。
江國作品の魅力は、感覚的な言葉が切り開く外界の新鮮な手触りにあります。小説を読み進めるに従って、母親が娘の成長という現実と対峙することを余儀なくされていくわけですが、その娘の成長を実感する母親の「際どい感情の手触り」が、実に小説らしい表現で、読み応えがあります。
『神様のボート』は江国香織にしか書けないような作品であり、現代を代表する女性作家の実に「際どい」代表作だと思います。
この作品について江國香織は、「いままでに私の書いたもののうち、いちばん危険な小説だと思っています」と述べています。この小説は母娘の成長を描いた作品ですが、内容は際どく、身内や友人と連絡を絶ち、関東の周縁とも言える町を一年に一回ほどのペースで「旅がらす」として渡り歩きながら、娘の父親の「あの人」を探して回る話です。
東京の周縁を巡りながら、昼間にピアノを教え、夜はバーで働きつつ、正気と狂気が混在した日常の中で、父親を探し、娘を育てる母親の姿に、地に足の着いたリアリティが感じられます。
江國作品の魅力は、感覚的な言葉が切り開く外界の新鮮な手触りにあります。小説を読み進めるに従って、母親が娘の成長という現実と対峙することを余儀なくされていくわけですが、その娘の成長を実感する母親の「際どい感情の手触り」が、実に小説らしい表現で、読み応えがあります。
『神様のボート』は江国香織にしか書けないような作品であり、現代を代表する女性作家の実に「際どい」代表作だと思います。