2022/10/03

「没後30年 松本清張はよみがえる」第10回『昭和史発掘 三・一五共産党検挙』

  西日本新聞の連載「松本清張はよみがえる」第10回(2022年10月3日)は、『昭和史発掘』より「三・一五共産党検挙」について論じています。担当デスクが付けた表題は「拷問の経験も下地 思想弾圧の内情描く」です。『昭和史発掘』については社会史から、「2.26事件」や「スパイ"M"の謀略」も検討しましたが、昭和維新期のことは『神々の乱心』と被るのと、スパイM(三船留吉)が暗躍した時期の日本共産党は、福本和夫や佐野・鍋山がおらず、思想史的にはあまり考えるべきことがないため、「三・一五共産党検挙」を選びました。大森銀行ギャング事件などを活写した『日本共産党の研究』などの著作で知られる立花隆とのmatch-upです

 松本清張は1929年(昭和4年)に小倉警察署で「思想犯」として拘留され、特高に竹刀で拷問をされた経験を持ちます。八幡製鉄所で働いていた文学仲間が、非合法に出版されていた「戦旗」を読んでいたことから、同じグループだと見なされたわけです。「戦旗」は1928年(昭和3年)の三・一五共産党検挙の直後に、文学面での共産主義者の機関誌として発行された文芸誌で、小林多喜二が「蟹工船」を発表したことで広く知られています。

 ただ当時19歳だった松本清張は、共産主義への関心は全く持っておらず、印刷所の見習工として必死で図案の勉強していました。彼は家が貧しいため中学校に通うことができず、借金取りに追われる父を見ながら「文学などやっていられない、早く生活を安定させなければ、一家が路頭に迷う」(「半生の記」)と考えていました。

 小林多喜二は個人的に好きな作家で(全集も所有していますが)、「蟹工船」も良いですが、「党生活者」が瑞々しい筆致で、素晴らしいです。

 昭和維新期の左右のイデオロギーについては、下の「実録・共産党 日本暗殺秘録 解説」に記しています。個人的には、戦前の共産党では三・一五検挙の後、出所して、柳田国男に私淑し、『日本ルネッサンス史論』や『日本捕鯨史話』を記した、福本和夫に関心があり、いつか何か書くつもりでいます。

https://makotsky.blogspot.com/2009/10/blog-post.html

【昭和史発掘 三・一五共産党検挙】拷問の経験も下地 思想弾圧の内情描く

没後30年 松本清張はよみがえる(10)

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