2021/01/19

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第141回 荻原浩『海の見える理髪店』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第141回 2021年1月17日)は、荻原浩の直木賞受賞作『海の見える理髪店』を取り上げています。表題は「新感覚の大人の通過儀礼」です。

 様々な事情で家族と生き別れたり、死別した人々を描いた6つの短編から成る作品です。2016年に本作は直木賞を受賞し、荻原浩は多様な種類の作品を書き分ける短編の名手としての評価を高めました。成城大学で同期だった斎藤美奈子は、文庫版の解説で、荻原の作家としての多彩さを、コピーライターとして独立した人間らしい「アイデア」から生まれたものだと分析しています。

 表題作の「海の見える理髪店」は最初に収録されている短編で、戦前生まれの床屋の店主の紆余曲折の人生が、海沿いの風景と共に、読後に強い印象を残す作品です。店主は、かつて大物俳優や政財界の名士たちを常連客として持っていた有名な理容師で、戦時中から父親の床屋で出征する兵士たちの頭を刈り、職人としての腕を磨いてきました。昭和三十年代に「慎太郎刈り」が流行して床屋が繁盛したり、昔は女の子も床屋に通い「乙女刈り」を好んでいたといった描写に、時間の重みが感じられます。

「仕事っていうのは、つまるところ、人の気持ちを考えることではないかと私は思うのです」と「訳ありの客」に語り掛ける店主の言葉には、有名店を築きながら刑務所に入った経験を持つ、叩き上げの人間らしい「人生哲学」が感じられます。

荻原浩『海の見える理髪店』あらすじ

海辺の小さな町に佇む訳ありの理髪店を舞台にした表題作など、家族との別れをめぐる短編6本を収録。残業で家庭を顧みない夫に嫌気がさし、娘を連れて実家に帰った娘が不思議なメールを受け取る「遠くから来た手紙」など、感動的な作品が並ぶ。荻原浩らしい個性的な短編集で、第155回直木賞受賞作。


2021/01/13

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第140回 三浦しをん『風が強く吹いている』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第140回 2021年1月10日)は、三浦しをんの箱根駅伝を題材としたベストセラー小説『風が強く吹いている』を取り上げています。表題は「選手の内面から迫る箱根駅伝」です。

 走るという「原始的な運動」を極める大学の競争部の選手たちが「東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」に挑む雄姿を描いた作品です。漫画化やアニメ化もされて人気を獲得し、大学駅伝を描いた小説として、幅広い世代に知られています。内面描写が魅力的で、明治大学の八幡山グラウンドに近い場所で練習する「寛政大学」の個性的な選手たちが、チームメイトやライバル、家族に対する複雑な感情と向き合いながら、「強さ」を模索して成長していきます。アニメ版では一部の選手が「前に!!」と腕に記していますが、これは明治大学のラグビー部の監督・北島忠治が唱えた「前へ。」というスローガンを連想させます。

 実在するスポーツ大会を描いたエンタメ系の小説は多いですが、本作は純文学のような内面描写が魅力的です。選手たちが互いに励まし合いながら襷を繋ぎ、家族や友人たちへの思いを背負って走り抜く駅伝のリアリティを、日常的に数十キロの距離を走り、鍛錬を重ねてきた選手たちの青春を通して描いた、現代小説らしい「スポコン文学」です。

 



2021/01/06

「すばる」(集英社)2021年2月号に寄稿しました

 「すばる」(集英社)2021年2月号に、吉田修一『湖の女たち』の書評を寄稿しました。琵琶湖の近くの介護療養施設で起きた「百歳の老人」の殺人事件の謎に迫る作品です。老人がハルビンを拠点としていた元731部隊(関東軍防疫給水部本部)の課長の元京都大学教授だったことから、社会派のミステリー小説の色彩を帯びます。

 ただ小説は従来の吉田修一作品と同様に読みやすい内容で、川端康成の『みずうみ』を想起させる危うい恋愛劇が面白く、惚れ込んだ女性のあとを付ける癖のある刑事・圭介と、その欲望に応える介護士・佳代のエロスとタナトスが交錯する反社会的で際どい描写に、強い読みごたえを感じます。タイトルは川端康成の『みずうみ』の一節を借りて「『悪魔ごっこ』が映し出す『魔界の湖』」としました。

「すばる」2月号は、文芸誌らしいコンテンツといえる「批評(クリティーク)」の賞が大々的に表紙を飾っているのが面白いと思いました。新型コロナ禍ということもあり、実利的な物事に関心が向かいがちな時代ですが、時間的な拡がりと、分野横断的な視野を持った批評を志す若い人が増えてほしいです。



2020/12/23

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第139回 柴崎友香『春の庭』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第139回 2020年12月20日)は、柴崎友香の芥川賞受賞作『春の庭』を取り上げています。表題は「田舎のような都会の風景」です。年内の連載はこの回が最後で、年明けの掲載で第140回です。

 東急世田谷線の近くの高級住宅地に建つ風変わりなアパートを舞台にした芥川賞受賞作です。世田谷線の終点の下高井戸は世田谷区の北東部の街で、江戸時代には甲州街道の第一宿場町「高井戸宿」として栄え、関東大震災後に多くの人々が移住してきた歴史を有し、近隣に明治大学和泉キャンパスや日大文理学部があるため「学生街」としても賑わっています。

 この小説は都心の喧騒から離れた場所を、ゆっくりとした速度で走る世田谷線のように、穏やかな時間を感じさせる作品です。「一人で静かな道を歩いていると、今暮らしているこの街の風景と、記憶にある生まれ育った街の風景とが、建物の規模や隙間との関係も人の密度もあまりにも違うので、記憶の中の街のほうが遠く、他人のもののように思えた」という太郎の叙述は、世田谷の風景に対する不思議な感情を代弁していると思います。

柴崎友香『春の庭』あらすじ

 東京都世田谷区にあるアパート・ビューバレスサエキⅢを舞台にした大阪出身の太郎と、漫画家の西さんの日常生活を描いた作品。隣には「春の庭」と題された写真集の撮影場所となった有名な「水色の家」が建つ。アパートは取り壊しが決まっており、部屋番号の代わりに干支記された昭和の雰囲気の部屋が並ぶ。服飾の専門学校で縫製を教えていた「巳」など、変わった経歴を持つ人々との交流を描く。第151回芥川賞受賞作。


2020/12/16

BBC「スー・パーキンスとさぐる現代日本の多様な文化」(丸善出版)の監訳

 BBCのドキュメンタリー「スー・パーキンスとさぐる現代日本の多様な文化」前篇・後篇を監訳しました。発売は丸善出版です。授業利用や図書館貸出、館内上映が可能な作品のため、高めの価格設定になっていますが、ぜひお近くの図書館への配架をリクエストして頂ければ幸いです! サンプルムービーも下のサイトで視聴可能です。

BBC スー・パーキンスとさぐる現代日本の多様な文化 [Japan With Sue Perkins] 前編

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b304097.html

BBC スー・パーキンスとさぐる現代日本の多様な文化 [Japan With Sue Perkins] 後編

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b304098.html


監修のことば 酒井信
イギリスのBBCが制作した「現代日本の文化的・経済的な成功の謎」に迫るドキュメンタリーです。ナビゲーターのスー・パーキンスはBBCの番組に数多く出演するケンブリッジ大学卒のコメディアンで、ユーモアを交えながら日本社会の表裏の問題に鋭く切り込んでいます。ポップカルチャーから伝統産業まで日本の魅力と問題点について深く考えさせられる内容です。社会学、国際文化学、観光学、英語学、日本語教育の教材としてお勧めできます。

著者名 酒井 信 監訳

制作元 BBC

発売   丸善出版株式会社

発売/発行年月 2020年12月

媒体 DVD

時間 各50分

音声/字幕 英語 / 英語、日本語

ジャンル 地理・地誌・紀行 >  世界地理・紀行

館内視聴 館外個人貸出 館外団体貸出

館内無償上映 学外貸出 授業利用

シリーズ紹介

英国でコメディアン、女優、作家として活躍するスー・パーキンスが東京、京都、伊勢、広島などを旅して、日本の様々な文化を紹介する。テクノロジーとサブカルチャーが発達した未来都市でありながら、古き良き伝統を重んじる国でもある日本の“いま”を英国人の視点で紹介する。

内容紹介

紹介する現代日本の文化事象

前編

女子相撲チーム

ロボットと暮らす家族

地獄のビジネススクール

ソロ・ウェディング

ポップアイドルとオタク

癒しと巡礼


後編

薄れゆく芸妓文化

伊勢志摩の海女

原爆の記憶

レンタル家族

メイドカフェ

婚活パーティー

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第138回 宮下奈都『羊と鋼の森』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第138回 2020年12月13日)は、宮下奈都の本屋大賞の大賞受賞作『羊と鋼の森』を取り上げています。表題は「若い調律師の成長物語」です。

 ピアノとは精巧に作られた木製の「弦楽器」で、18世紀の初頭にチェンバロを改良して生まれた近代の産物です。本文中の言葉を借りれば、「いい草を食べて育ったいい羊のいい毛」を贅沢に使ったフェルトのハンマーが、鋼鉄で作られた弦を叩き、その振動がエゾマツの木を主な原料とした響板に伝わり、響板が空気を振動させることで豊かな音が生まれます。現代でもピアノのハンマーは羊の毛で作られ、響板は木で作られており、多くの演奏会がアナログ(生音)で行われています。

 この小説は北海道の山の集落で育った主人公の外村がピアノの調律師として成長していく物語です。調律師の仕事は「精密な楽器」であるピアノを、各パーツの素材の特性を理解しながら、気温や湿度に応じて調整することにあります。綿羊牧場の近くで育った外村が、音楽の素養を持たず、徒手空拳で「羊と鋼の森」が奏でる音を求めて成長していくプロセスには、ピアノ版の「羊をめぐる冒険」という趣きが感じられます。

 恩田陸の「蜜蜂と遠雷」のようにピアニストを題材とし、音楽を様々な喩えを駆使して表現した優れた現代小説も存在します。ただ過疎化の進む開拓地で育った調律師の視点から、自然の音の記憶を辿りつつ「目指す音」を追求する本作もオリジナリティが高く、面白い作品です。


宮下奈都『羊と鋼の森』あらすじ

北海道の山の集落で生まれ育ち、高校卒業後にピアノの調律師となることを決意した外村は、専門学校で教育を受けたのち、地元に近い江藤楽器店に就職する。天才的な調律師の板鳥に憧れつつ、先輩の柳や秋野に見守られながら、外村は調律師として成長していく。2016年に第13回本屋大賞で1位を獲得。


2020/12/09

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第137回 藤沢周『ブエノスアイレス午前零時』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第137回 2020年12月6日)は、藤沢周の芥川賞受賞作『ブエノスアイレス午前零時』を取り上げています。表題は「湯上り 上気した時間と記憶」です。

 温泉は日本を象徴する観光地として国内外の観光客で賑わっています。ただジョン・アーリ『観光のまなざし』によると、イギリスでは健康の効能が疑わしいと見なされて19世紀に廃れた歴史があります。確かに温泉と一口に言ってもその成分は多様で、効能も高血圧や動脈硬化、糖尿病が治るなど、にわかには信じがたい内容が記されています。

 イギリスで温泉地として知られるのは、英語で浴場を意味するBathの名を冠するイングランド南部のバースぐらいです。私もバースを訪れて驚きましたが、世界文化遺産に登録されている温泉地でありながら、入浴できる場所はごくわずかしかありません。ローマン・バスなどの有名な観光地も、緑色に輝く水面やローマ時代の遺跡などを見学させる場所に過ぎないのです。イギリス人の風呂嫌いが筋金入りであることは、温泉地の観光地としての価値の低さからも分かると思います。

 藤沢周の「ブエノスアイレス午前零時」は、日本の温泉地らしい「上気した雰囲気」を伝える現代小説です。藤沢周は新潟県西蒲原郡の出身で、父親が定宿にしていた新潟県阿賀町のきりん山温泉の旅館をモデルに、この作品を記したそうです。




藤沢周『ブエノスアイレス午前零時』あらすじ

 ダンスホール目当ての客とスキー客でにぎわう雪深い温泉町のホテルを舞台にした作品。「ブエノスアイレス午前零時」という表題はピアソラの曲に由来する。都会の広告代理店を辞め、実家のある街に戻って来た若者と、梅毒を患った元売春婦と噂される老婆の交流を描いた抒情的な作品。表題作は第119回芥川賞を受賞。


2020/12/01

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第136回 柳美里『JR上野駅公園口』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第136回 2020年11月29日)は、柳美里の全米図書賞(翻訳部門)受賞作『JR上野駅公園口』を取り上げています。表題は「東北の出稼ぎ通し描く戦後史」です。

東日本大震災で被災地となった福島県南相馬市の海沿いの集落で生まれ育ち、東京に出稼ぎに出た男の人生を描いた作品です。作者の柳美里は平成27年に神奈川県から南相馬市に移住し、自作から採った屋号を持つ書店「フルハウス」を開業しています。表題は男が出稼ぎで家族を養ったのち、上野公園でホームレスになったことによるものです。本作によると「上野恩賜公園のホームレスは、東北出身者が多い」らしいです。

「突然いなくなって、すみません。おじいさんは東京へ行きます。この家にはもう戻りません。探さないでください」という孫娘への書置きが切なく、孫娘に迷惑をかけたくないという不器用な思いの強さに、出稼ぎの苦労を味わった労働者らしい矜持=感情の訛りが感じられます。ホームレスとなった男の人生を通して、上野恩賜公園の特異な歴史に迫る筆致も興味深いです。

 本作を記した動機について柳美里はあとがきで次のように記しています。「家を津波で流されたり、「警戒区域」内に家があるために避難生活を余儀なくされている方々の痛苦と、出稼ぎで郷里を離れているうちに帰るべき家を失くしてしまったホームレスの方々の痛苦がわたしの中で相対し、二者の痛苦を繋げる蝶番のような小説を書きたい――、と思いました」と。「JR上野駅公園口」は、福島県の浜通り出身の男の人生を、当地に住む作家らしい視点から戦後史を交えて丹念に描いた「故郷喪失」の物語です。



柳美里『JR上野駅公園口』あらすじ

1963年、東京オリンピックの前年に、男は福島の浜通りから上京し、出稼ぎで家族を養う。苦しい生活を立て直すことに成功したが、家族との死別を経験し、孫娘に迷惑をかけたくないという思いで、上野恩賜公園でホームレスとなる。福島出身の男の人生を通して、日本の戦後史を描く。2020年全米図書賞(翻訳部門)受賞。


2020/11/24

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第135回 姫野カオルコ『昭和の犬』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第135回 2020年11月22日)は、姫野カオルコの直木賞受賞作『昭和の犬』を取り上げています。表題は「シベリア帰りの父 激動の昭和」です。

姫野カオルコの出身地・滋賀県にある架空の「香良市」を舞台にした自伝的な小説です。表題は、旧日本陸軍の武官だったいかつい父親が、軍用犬の扱いに慣れていたこともあり、犬たちをイクと同じ子供のように一緒に育てたことによります。

父親の口からは戦時中のことや戦後の抑留のことは詳しく語られないですが、終戦から帰国までの約10年間に大変な経験をしてきた様子です。例えば彼は「赤いウインナーはカンガルーの肉で作ってあるという噂や」と述べ、「子供たちの弁当を豪華にしてくれる真っ赤なソーセージ」を決して口にします。イクはそれがシベリアで鼠を原料とした肉を食べたためだと推測している様子です。

当時、戦争の影は色濃く、例えば軽食屋「有馬殿」の親父は戦争神経症を患っており、「人の肉はな、鼠より酸いいんや。そら、大きい鼠のほうがうんとごっつぉ〈ごちそう〉やったがな。オイカワもな、鼠食うて、ばば垂れっぱなしで生きたらよかったんや」などとつぶやきます。この作品は、戦時中の生死を分けた経験が「地中に埋もれた不発弾」のように日常のそこかしこに転がっていた時代の記憶を伝える「市井の歴史小説」と言えます。




2020/11/17

西日本新聞「現代ブンガク風土記」第134回 古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』

 西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第134回 2020年11月15日)は、古川日出男の傑作『ベルカ、吠えないのか?』を取り上げています。表題は「軍用犬でひも解く20世紀史」です。

この作品は北海道犬で、第二次世界大戦時に海軍の軍用犬となった「北」とその末裔の犬たちを中心とした物語です。北は「発達した筋肉と寒さに対する強い耐性を備えた北海道犬(旧称アイヌ犬)」で、日本海軍の侵攻に従って島に自生している野草の毒見を任務としています。

物語は当時、日本軍が占領したアリョーシャン列島の2つの島の1つ、鳴神島(キスカ島)からはじります。史実として20世紀にアメリカ合衆国の領土が占領されたのは、1942年の鳴神島と熱田島(アッツ島)の二島の占領以外にないらしい。日本列島から遠く離れたこれらの島々の占領はミッドウェーへの攻撃から米軍の目をそらすための陽動作戦でしたが、藤田嗣治の戦争画でも知られる通り、1943年の5月に熱田島の守備隊は全滅しています。その約一か月後に鳴神島にいた5200名の守備隊はケ号作戦で撤退を余儀なくされ、日本軍による米国領・アリョーシャン列島の占領はわずか一年ほどで終了します。

著者が記しているように、20世紀は戦争の世紀であり、軍用犬が戦争の最前線で活躍した世紀でもあります。人間に最も慣れ親しんだ動物である犬が、人間が引き起こした戦争を通して世界各地へと分散したことで、20世紀に犬のグローバル化と軍事化も進行したわけです。この作品は、史実としてキスカ島に残された軍用犬の物語を、著者らしい想像力を付与してフィクションとして展開した一流の偽史小説です。


古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』あらすじ

1943年にアリョーシャン列島に残された四頭の軍用犬、北、正勇、勝、エクスプロージョンとその末裔の犬をめぐる長編小説。軍用犬の歴史を通して、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ペレストロイカなど現代史がひも解かれる。日本軍の軍用犬の末裔たちが、アメリカ合衆国やソ連に渡り、冷戦構造の中で異なる人生を歩む大スペクタクル。2005年刊行の古川日出男の代表作。