西日本新聞の連載「現代ブンガク風土記」(第69回 2019年7月28日)は、保坂和志の鎌倉を舞台とした代表作『季節の記憶』を取り上げています。表題は「鎌倉の風景と哲学的雑談」です。写真は一週間ほど前の授業終わりに、作品の舞台となった稲村ヶ崎で撮影した写真です。海を見ながら考え事をしている人がたまたま映っています。
保坂和志は三歳の頃から鎌倉で育ち、湘南の名門校、栄光学園高校を卒業し、職業作家となった後も生活の拠点を同地に据えています。この作品で描かれる稲村ヶ崎の風景は、登場人物たちの「季節の記憶」を通して、細やかに描かれています。秋の日の夕方、「この時期、人間っていうのは、つくづく言語でできていると思うな」と松井さんが語るように、何気ない日常会話の中に「季節の記憶」が宿っていることを感じさせます。
所々にシリアスな描写もあり、「鎌倉、逗子、横須賀、藤沢あたりには米軍の池子弾薬庫周辺の国有林の伐採をめぐる反対運動のような開発に絡む市民運動がたえずある」といった一文が挿入され、現実に引き戻されるのも、作品の魅力です。
出来事らしい出来事は起こらない作品ながら、「僕」の友達の登場人物たちの個性が光る作品で、稲村ヶ崎からほとんど動かない小説を、多彩なものに仕上げています。暇を持て余している「僕」と、個性の強い友人たちとの哲学的な雑談も面白く、地に足の着いた思想性と、日常生活に立脚した文学性の双方が感じられる作品です。
あと11月3日の文化の日に、福岡ユネスコ主催の文化セミナー(@渡辺通りの電気ビル)で講演をすることになりました。お二人のメディアでご活躍されている先生方と「世界史レベルで『平成』を振り返る」という趣旨の内容です。こちらの詳細はまた後日。
保坂和志は三歳の頃から鎌倉で育ち、湘南の名門校、栄光学園高校を卒業し、職業作家となった後も生活の拠点を同地に据えています。この作品で描かれる稲村ヶ崎の風景は、登場人物たちの「季節の記憶」を通して、細やかに描かれています。秋の日の夕方、「この時期、人間っていうのは、つくづく言語でできていると思うな」と松井さんが語るように、何気ない日常会話の中に「季節の記憶」が宿っていることを感じさせます。
所々にシリアスな描写もあり、「鎌倉、逗子、横須賀、藤沢あたりには米軍の池子弾薬庫周辺の国有林の伐採をめぐる反対運動のような開発に絡む市民運動がたえずある」といった一文が挿入され、現実に引き戻されるのも、作品の魅力です。
出来事らしい出来事は起こらない作品ながら、「僕」の友達の登場人物たちの個性が光る作品で、稲村ヶ崎からほとんど動かない小説を、多彩なものに仕上げています。暇を持て余している「僕」と、個性の強い友人たちとの哲学的な雑談も面白く、地に足の着いた思想性と、日常生活に立脚した文学性の双方が感じられる作品です。
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